Room91  

2019.6.21

八丈島での暮らす母娘の

明るい台所のある家

美術監督 高橋泰代

何を言っても無視する反抗期の娘。その“仕返し”のため高校3年間“キャラ弁”をつくり続けた母。そのユニークなお弁当が話題となった「kaori(ttkk)の嫌がらせのためだけのお弁当ブログ」を原作とした『今日も嫌がらせ弁当』。会話のない親子のバトルを、お弁当を通じて愛情たっぷりに描いた本作で、美術監督を務めるのは高橋泰代さん。自然豊かな八丈島で暮らす二人の住まいはどのように彩られたのか。

ケンカするほど仲がいい。かわいらしい親子の暮らし

物語の舞台は東京都八丈島。主人公の持丸かおりは、12年前に夫を亡くしシングルマザーで娘二人を育てていた。いまでは長女は家を出て、高校生になる次女と二人暮らしをしている。
「塚本連平監督は、家の佇まいをすごく大事にされていました。当初は、外観も家の中も、八丈島で撮影したかったのですが、どちらかというとおじいちゃんおばあちゃんのお家が多く、若い母子家庭のこじんまりした可愛らしい雰囲気とはまたちょっと違い、なかなかイメージ通りのところが見つからなかったんです」
そこで、持丸家の外観は八丈島で撮影し、室内は撮影のしやすい神奈川県秦野にある家を借りて撮影することとなった。

入り口のポストはカラフルな色合いと手作り感のあるデザインで、明るい雰囲気を醸し出す。

ブーゲンビリアやハイビスカスなど南国を感じる花が彩る
エントランス。地元の造園業者さんへ意見を聞いて、季節
感を考えながら、なるべく八丈島で長く咲いている植物を
飾った。

高橋さんにより持丸家外観のスケッチ。「大工さんだった父がつくってくれた雰囲気を家の中にも残したくて、庭には手作りっぽいデッキを設置しました」。家の奥には、サンルームがある。

持丸家をつくるに当たり、高橋さんが意識したのは「八丈島の風土を投影すること」。
「外観を撮影したところも平屋なのですが、風の強い八丈島には平屋が多いんです。また、どの家も外にサンルームのような洗濯干し場があり、外観を撮影したお家にもあったので、もともと付いていたビニールの壁面を板張りに変えさせてもらって、パッと観たときに建築物があるとわかるようにしました。家の中のロケセットは、和室だったのが良かったですね。八丈島はわりと畳のおうちが多くて雰囲気も似ていたんです。小物も、八丈島で見繕ったものを並べているんですよ」

塚本監督の「時計は全部料理に関するものにしたい」という希望から、美術部で探してきたというトースト型の時計。キッチンには、フライパン型で、針がフォークとスプーンになっている可愛らしいものも。

大工だった父のトンカチも置いてある、思い出の品を飾っ
たコーナー。家族が集まる食卓のすぐ近くに配置し、家族
団欒を感じられるように。

八丈島の家をロケハンすると、家の中にはつくりつけの棚
が多かったのだとか。そこから、持丸家のダイニングにも、
八丈島の風土を感じてもらえるように、つくりつけの棚を
加えた。

「母娘ふたり暮らしだが決してさみしいわけではなく、明るくかわいらしく生活している」。そんな塚本監督の要望をもっとも投影したのは台所だった。 「装飾部さんがテーブルクロスや、お弁当を包むクロス、お弁当箱までいろいろ用意してくれて、とてもカラフルになりました。」
この台所は横に広く移動ができ、料理をするには機能的なつくり。実際撮影で借りた家はもっと横に広かったため壁で仕切るなどして、少し狭くなるように工夫したのだという。母・かおりは、この台所で反抗期の娘に“仕返し”すべく、高校の3年間毎日“嫌がらせ弁当”をつくる。個性豊かな“キャラ弁”は、原作者のkaori(ttkk)さんが作ったものから、映画オリジナルのものまで多数用意された。

「お弁当は、この作品の主人公でもあります。私も、ずっとお弁当のデザインを考えていたんです。海苔で新たなキャラクターをつくったり、映画で撮影した風景をお弁当に取り入れたり。お弁当については塚本監督の要望もとても細かくて実はちょっと大変でした(苦笑)。デザインをしてもそれを実際食べられる食材でつくらないといけない。フードコーディネーターのぬまたあずみさんとも密に相談しながら一緒に進めましたが、なかなか難産だったお弁当もありました」

陽の光がたくさん入りそうな台所。「朝日が入ってお弁当を照らすという画になるように、横にも窓を入れました」

とにかく大変だったのは、海苔を切ること。「撮影の方が早くて、お弁当が追いつかなかったくらい。美術部総出で海苔を切りました」。ときにはkaori(ttkk)さんが手伝いに来て、海苔を切ってくれたのだとか。
「私たち美術が持っている刃先の丸いデザインカッターをkaori(ttkk)さんも使っていて、それで海苔を切るのですが、やっぱりすごく早いんですよ。パパパッとできちゃう。あれには驚きました」
 毎朝早起きしてつくってくれた母の愛情を感じられるような本作。アイデアが詰め込まれた数々のお弁当をぜひ劇場でご覧ください。

友達の間ではクールなキャラで通っている次女・双葉の部屋。優しい雰囲気の和室にブルーを差し色にして、少し落ち着いた雰囲気に。

少し年季の入った平屋の一軒家。2LDKほどの広さで、このサイズのコンパクトな家は八丈島にも多いのだとか。家の奥には、洗濯物を干すサンルーム、表には父が手作りしたデッキがある。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#119(2019年8月号 6月18日発売) 『今日も嫌がらせ弁当』の美術について、美術監督 高橋さんのインタビューを掲載。
プロフィール

高橋泰代

takahashi yasuyo
70年青森県生まれ。今村力、小川富美夫らに師事し、06年『チェケラッチョ‼』で美術監督デビュー。17年P-Polygon.を設立。おもな作品に『虹の女神』(06)、『余命』(09)、『スイートリトルライズ』(10)、『みなさん、さようなら』(12)、『心が叫びたがってるんだ』『ユリゴコロ』(ともに17)など。近作にスペイン映画『The Japan Family:Los Japón』、ドラマ『フェイクニュース』(NHK)がある。
ムービー

『今日も嫌がらせ弁当』

監督・脚本/塚本連平 原作/「今日も嫌がらせ弁当」ttkk(Kaori) 出演/篠原涼子 芳根京子 松井玲奈 佐藤寛太 佐藤隆太 配給/ショウゲート (19/日本/106min) 夫を亡くし、シングルマザーになって12年。母・かおりは、反抗期まっさかりの次女・双葉に手を焼いていた。口を聞かなければ、目も合わさない。いつまでも態度を改めない娘に、キャラ弁を作って仕返ししようと思いつく。6/28〜全国公開。 (C)2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会
『今日も嫌がらせ弁当』公式HP
http://www.iyaben-movie.com
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