Room85  

2018.12.21

体は不自由、心は自由!

鹿野と“ボラ”たちの自立生活

美術監督 三ツ松けいこ

難病の筋ジストロフィーを患い、人の助けなく生活できない鹿野靖明。鹿野は、ボランティアたちを“ボラ”と呼び、彼らとの自立生活を送っていた。『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は、体は不自由、でも心は自由な鹿野と、彼と関わることで変わっていく人々の人生を清々しく描く。美術監督の三ツ松けいこさんは、実在した人物の部屋にどうアプローチしたのか?

明るさと憧れを散りばめた、鹿野靖明の部屋

ボランティアの力を借りて自立生活を送る鹿野靖明(大泉洋)が暮らす部屋は、北海道・札幌の「山の手団地1号棟」で撮影された。この部屋は、映画のモデルになった同名の鹿野靖明さんが実際に暮らしていた場所だ。
「山の手団地1号棟は、現在も障がいをもった方が住んでいる集合住宅です。ロケセットとして使用した部屋は広い方で、小さい部屋も合わせると8部屋くらいがまっすぐ一本の廊下に面して並んでいるつくり。廊下と玄関はフラットになっていて、ドアも引き戸で、スムーズに車椅子が入ります。車椅子に座ったまま洗顔するので、洗面台も少し低めにつくられていて、鏡も斜め下向きになっていました。もともとがバリアフリーなので、映画のために大きく加工する必要はありませんでした」

レシート入れや、鹿野の好物が書かれた紙が貼られている
冷蔵庫。三ツ松さんが、実際のボランティアをしていた方
に話をきき、取り入れた装飾。

この場所を映画の舞台として飾りこむにあたり、三ツ松さんが参考にしたのは、当時ボランティアの方が撮影していた実際の鹿野さんの部屋の写真だった。壁の張り紙も再現し、ダイニングの食器棚や寝室の本棚などのデザインも当時と似たものを探して配置した。
「前田哲監督からは、『1994年という時代を感じるものはそのままにしつつ、地味にならないように』とリクエストがあったので、明るさを意識的に前に出すようにしました。茶箪笥は明るめの茶色、カーテンの色は鮮やかにして、本棚は赤に。実は、鹿野はチェック、ボランティアの美咲(高畑充希)は赤で、医大生の田中(三浦春馬)は青という風に衣装もポイントになっているんです。衣装との色のバランスも考えながら飾っていきました」

ボランティアたちが使う台所は、彼らの生活感が醸し出されている。鍋やポットなど、細かなところでも赤色を使った。

差し色にもなっている赤の本棚。クラッシックが好きだった鹿野さんの部屋を見習い、オーディオやCDなども飾った。

1994年の物語のため、置いてあるテレビはブラウン管。
今ではあまり目にしないVHSのビデオデッキも。時代を
感じるアイテムにどこか懐かしい雰囲気も漂う。

三ツ松さんが心配していたのは、「鹿野さん本人が使っていた車椅子と同じものを探す」ことだった。「アドバイスを受けてオークションサイトで探してみると車椅子はすぐに見つかったんです。それを、演じる大泉さんの仕様に合わせて改造し、ご本人が使っていたものと色を似せるために茶色い皮を貼ったりしてアレンジしました」

鹿野さんが実際に使っていた車椅子と同じものを探して撮影で使用。演じる大泉洋さんはこの車椅子を使ってかなり練習をされたそう。

ベッドの位置だけは、実際の鹿野さんの部屋の配置とは違うのだそう。背の高い大泉さんに合わせたベッドは昔のものより少し大きく、撮影の都合も考慮して置いた。

ベッドの周りの張り物も、実際の部屋を参考に。ボランティアが誰でも見ればわかるように、「体位交換のやり方」などが記されている。

寝室の壁には、北海道の美しい景色の写真が貼られている。

資料写真を何度も見返しているうちに、鹿野さんの部屋には手塚治虫の漫画や鉄腕アトムのグッズが多いことに気づいたという三ツ松さん。
「『どうしてこんなにアトムが好きだったんだろう?』と美術部のみんなで考えたのですが、自分の体が動かせない鹿野さんは、自ら動く作られたロボットに憧れがあったんじゃないかな、と。それで、部屋の中にもロボットのモチーフを所々に置きました」

「ロボットへの憧れ」を表現するため、様々なロボットのモチーフが部屋の各所に飾られている。

舞台が北海道・札幌のため、三ツ松さんが最初に手配したのはFF式ストーブだった。「北海道の家には大体この煙突がついているストーブがあって、外に煙が出るようになっています。固定されているため、夏はこの上に扇風機を、冬はやかんを置きました」

リビングダイニングと寝室を有した2LDKの住まい。トイレと洗面所は広めにつくられている。床がグリーンの部分は防水加工に。小さな和室はボランティアの方が休む部屋。映画には登場しないが、寝泊りする道具なども揃えて飾ってあったとか。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#116(2019年2月号 12月18日発売) 『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の美術について、美術監督 三ツ松さんのインタビューを掲載。
プロフィール

三ツ松けいこ

mitsumatsu keiko
72年千葉県生まれ。『海街diary』(15)で、第39回日本アカデミー賞・優秀美術賞を受賞。おもな作品に『血と骨』(04)、『ゆれる』(06)、『ディア・ドクター』(09)、『そして父になる』(13)、『銀の匙 Silver Spoon』(14)、『溺れるナイフ』『永い言い訳』(ともに16)など。近作に『万引き家族』『菊とギロチン』(ともに18)がある。
ムービー

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』

監督/前田哲 原作/渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫刊) 出演/大泉洋 高畑充希 三浦春馬 ほか 配給/松竹 (18/日本/120min) 幼い頃に難病の筋ジストロフィーを患った鹿野は、介助なしでは生活できないにもかかわらず自立生活を送っていた。自ら大勢のボランティアを集めわがまま放題。図々しくて、おしゃべりで、惚れっぽい鹿野に“ボラ”は手を焼きながらも、その生き方に影響を受けていくのだった。12/28~全国公開 ©2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』公式HP
http://bananakayo.jp/
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