Room84  

2018.11.7

深く眠り続ける娘を想う

母の愛が溢れる家

セットデザイン 郡司英雄

プールで溺れ、意識不明となった娘。残酷な状況下で、両親は究極の選択を迫られる――。愛情の危うさと強さを描く『人魚の眠る家』。東野圭吾のベストセラー小説を、『TRICK』『SPEC』などの人気シリーズから、『明日の記憶』『天空の蜂』など社会派作品までも手がけてきた堤幸彦が映画化。舞台となるのは、幼い娘が深く眠り続ける家。セットデザインを担当した郡司英雄さんはこの家に母の想いを込めた。

人魚をイメージした深いブルーの部屋

主人公の薫子(篠原涼子)が幼い子どもたちと暮らす家は、東京の白金台に建つ大きな一軒家。もともとは夫・和昌(西島秀俊)の父が住んでいた家で、父は和昌が経営するIT機器メーカー・ハリマテクスの創始者でもある。 この家の外観を撮影したロケセットは、新宿にある石橋湛山邸(第55代内閣総理大臣・石橋湛山の自宅)。親子4人暮らしにしては大きな家で、由緒ある風格も漂っている。

ロケ撮影した播磨家の外観。植木などを入れて、セットの玄関周りと辻褄が合う様に工夫されている。

家の中のセットをつくるとき、若夫婦の家なのでこじんまりしている方がいいんじゃないかという意見もありましたが、映画のポイントになる家でもあるので、それでは美術として弱い。では、趣ある古い家を夫婦がリフォームしたという設定で進めようということになりました。キッチン周りとリビングダイニングはモダンに仕上げ、応接間はもともとの古い家の感じを残そうと、壁紙を使わず漆喰の壁にして、つくり付けの大きな本棚を置き、重厚感をだしています」

薫子と和昌は別居状態の仮面夫婦。家の中に夫のものは少なく、リビングには子どもたちのおもちゃがたくさん並んでいる。廊下を挟んですぐ対面にある広い応接間は、フラワーアレンジメントをしている薫子の仕事場だ。 しっかり子育てもしている薫子は、娘の小学校受験が終わったら離婚しようと決めていた。しかし突然、娘がプールで溺れ意識不明になったと悲報が届くのだった。

まるで幸せの象徴のように、リビングには子どものおもちゃが並ぶ。今回は、堤監督自ら指定したおもちゃが多数あったのだとか。

薫子は娘の介護をすることになるのですが、2階にある子供部屋を介護の部屋にするのはリアリティがない。母親はいつも目の届く場所できちんと看病するだろうと。然れば1階の応接室に介護ベッドを入れる。そこからは庭が見えるし、家事をする母はキッチンへもいきやすい。みんなで話し合いながら間取りを決めていきました」 そうして、応接間は娘が眠り続ける部屋となった。タイトルにある『人魚の眠る家』のイメージもあり、壁の色はブルーにしたと郡司さん。

薫子(篠原涼子)がフラワーアレンジメントをしている応接間。

応接間は、のちに眠り続ける娘の介護をする部屋に。堤監
督の「介護ベッドの周りを人が通れるほどの広さを確保し
たい」という希望に沿って、広さを確保した。

娘を思う母の気持ちを感じとれるベッド周りの装飾。ベッドの天蓋カーテンは、美術の露木恵美子さんのこだわり。医療機器は専門家への取材をもとに、リアリティのあるものを揃えた。

「撮影の相馬大輔さんからは、水中のイメージで、部屋の中に水で反射した光を入れたいというオーダーがあったので、庭には小さな池をつくりました」 いつも撮影が始まる数時間前には、堤監督が現場にやって来ていたのだとか。 「朝5時とか、まだ誰も来ていないような時間にいらっしゃって、ひとりセットを見ながらその日撮影する芝居を考えているんです。監督が来ていると聞くと、美術スタッフも立ち合って、何かリクエストがあれば都度対応していました。堤監督の現場にセットデザインとして入るのは初めてでしたが、とても人間味溢れる監督で、仕事をしていてとても楽しかったです」

一番大変だったのは土砂降りシーン。「庭に大雨を降らせたので芝生がダメになってしまって。全部剥がして養生シートをひいたのですが、いくらメンテナンスしても追いつかず、結局人工芝を張り直しました」

4LDKの一軒家。1階ではLDKと応接間の間に廊下を配置し、行き来しやすい間取りにしている。壁を取り外してリフォームしたであろうLDKは、子どもが遊びやすい広々とした空間。2階には子供部屋が2部屋と、夫婦の寝室があるという設定。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#115(2018年12月号 10月18日発売) 『人魚の眠る家』の美術について、セットデザイン 郡司さんのインタビューを掲載。
プロフィール

郡司英雄

gunji hideo
64年茨城県生まれ。95年フリーランスとなり、美術デザイナーとしてMV、CMを軸に活動。映画では99年『ワンダフルライフ』に磯見俊裕氏とともに美術監督として参加。近作にセットデザインで参加した『万引き家族』『パンク侍、斬られて候』(ともに18)がある。『ニセコイ』は12月21日公開。
ムービー

『人魚の眠る家』

監督/堤幸彦 原作/東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫) 出演/篠原涼子 西島秀俊 坂口健太郎 川栄李奈 ほか 配給/松竹 (18/日本/120min) 娘の小学校受験が終われば離婚をすると約束をしていた夫婦の元に、突然悲報が届く。娘がプールで溺れ意識不明になってしまったのだ。回復の見込みがない我が子を前に、究極の選択を迫られた夫婦は、最先端技術を駆使して前例のない治療を始めるが……。11/16~全国公開 ©2018「人魚の眠る家」製作委員会
『人魚の眠る家』公式HP
http://ningyo-movie.jp/
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