日本中を席巻した〈食べるラー油〉ブーム。その火付け役となった「辺銀食堂の石垣島ラー油」を生み出した辺銀夫妻の物語、『ペンギン夫婦の作りかた』。ある日突然思い立ち、縁もゆかりもない石垣島に移住してきた日本人の妻と中国人の夫。二人の共通点は〈食〉に対する情熱。そんな夫婦の家を飾った美術監督・露木恵美子さんに「夫婦の温かさが詰まった、心地よい空間のつくりかた」をききました。
text by 釣木文恵
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石垣らしさと気さくなペンギン夫婦らしさが融合した心地よい空間
ロケ地を探している中でこの家を見た瞬間、「ここだ!」と確信したという露木さん。「海がすぐそばにあって、防風のための木がこんもりと茂っている。ここならば外の空間が生きると思いました」。石垣の海沿いの家によくあるような大きな防風林の下には、心地よいベンチスペースが。近所の家からラタンのベンチをお借りして置いてみたそう。
「石垣の人は、家の前によく貝殻を飾っているんです。それもお借りしてまねしました。ラストで登場する表札は、石垣の陶芸家・奈美ロリマーさんにお願いしたものです」。映画の中で、ベンチに横にした網戸を置いて唐辛子を干すシーンは「実際に映画のモデルになった辺銀夫婦がやっていた方法。それを再現できたのはうれしかった」。
沖縄ならではの気持ちいい光を活かせるように、部屋のカーテンは薄手のもののみに。「窓の外の木が目隠しになりますしね。和室のカーテンは丈が足りないのですが、かえって移住してきた“急ごしらえ感”が出ました(笑)」。ダイニングテーブルといすは、石垣島の「福木家」(お花屋さんのかたわら、父が鉄の作家、息子が木の作家という地元の親子)の作品にほれ込み、急遽部屋に合うサイズのものをつくってもらった。飾ってある食器は石垣や沖縄本島で揃えたものだけでなく、質感が気に入った新潟の「工房るるの小屋」ものも。
「実際にお会いした辺銀夫婦はすごく〈開かれた方〉という印象でした。値段に関係なく心地いいものを集めてインテリアに取り入れている、その感じを大切にしました」。すべて辺銀夫婦のお手製というおいしそうな料理にも注目したい。料理を盛る素朴であたたかな器もご本人に提供していただいたのだとか。「器と料理の寄り添い方はさすがでした」。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#79(2012年12月号 10月18日発売)『ペンギン夫婦の作りかた』の美術について、露木さんのインタビューを掲載
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Profile
プロフィール

美術監督
露木恵美子
tsuyuki emiko
71年神奈川県生まれ。『洗濯機はまかせろ』(99)に映画スタッフとして参加。おもな作品に『花よりもなほ』(06)、『ぐるりのこと』『ジャージのふたり』(ともに08)、『極道めし』『アントキノイノチ』(ともに11)など。『俺俺』が公開待機中。
Movie
映画情報

ペンギン夫婦の作りかた
ペンギン夫婦の作りかた
監督/平林克理 脚本/アサダアツシ 平林克理 原案/辺銀愛理 出演/小池栄子 ワン・チュアンイー 深水元基 山城智二(FEC) 田仲洋子 大田享(FEC) 配給/プレシディオ(12/日本/90min)
フリーライターの歩美(小池)は、中国で出会ったカメラマン(ワン)と結婚し東京で暮らしていた。夫の会社が倒産し、気分転換で石垣島に旅行した夫婦は、その地に魅入られて移住を決める。二人は大好きな〈食〉を活かして暮らそうとするが……。10/20〜全国ユナイテッド・シネマ、新宿武蔵野館ほかにて公開
©2012『ペンギン夫婦の作りかた』製作委員会
ペンギン夫婦の作りかた公式HP