Room83  

2018.10.12

巨万の富を得た九十九の

空白の時間を凝縮した部屋

美術監督 三浦真澄

お金という普遍的なテーマをもとに、本当の幸せと、家族、友情のあり方を問う『億男』。原作は、2015年「本屋大賞」にノミネートされた川村元気のベストセラー。映画『ハゲタカ』や『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督がメガホンをとる。宝くじで3億円が当選した一男(佐藤健)と、その金を持ち逃げした親友・九十九(高橋一生)。親友だった二人が数十年ぶりに対峙する場所に、美術監督の三浦真澄さんは何を投影したのか。

ここが決まらないと、物語が始まらない

借金の返済に追われる生活を送っていた一男はある日、3億円の宝くじに当選した。しかし、その金は億万長者だったはずの親友・九十九に奪われる。 「大学時代親友だった一男と九十九が、長い年月を経て再会する場所が、九十九のマンションです。一男は、友人を信じてやってくる。そんな一男を九十九は裏切ることになる。二人が対峙する空間をどう表現するのか。大友監督も、『ここが決まらないと物語がスタートしない』とおっしゃっていました」

一男が持ってきた3億円。「1,000万円は10センチ、1億は1メートルと、お金の高さもしっかり検証してつくりました」

大学を中退し、バイカムという会社を立ち上げ巨万の富を得た九十九。その住まいは、『億男』の美術の中でも、一番思考錯誤したところだという。 「場所は六本木、高層マンションの最上階にあるペントハウスという設定でセットをつくりました。ここはもともと起業仲間との打ち合わせや、パーティーのために会社で借りたマンションで、バイカム解散後に、九十九が譲り受けてそのまま住んでいる……という考え方でつくりこんでいきました」 ものにも生活にも執着しない九十九。広い空間は使い切らず、デスクやソファなどは贅沢に配置。家具はビルトインの棚に、水槽、ワインセラーなど、すでにあった設定のものだけにとどめ、新しく入れないようにした。「ブランドものを置くのではなく、必要なときにドン・キホーテでさっと買ってくる。彼はそんな性格じゃないか」――九十九の裏設定は装飾の渡辺大智さんと細かに相談していった。

採光性の高い大きな窓は「サッシ屋さんに『こんなのさすがに大きすぎだよ!』と言われながら(笑)、つくってもらいました」。

「渡辺さんの装飾資料に、『親友が来たら、九十九は帰さないだろう。絶対家に泊めるはず』というような走り書きがあって、確かにそうだなと。そうであれば広いワンルームに寝床が必要。一男はそこに寝かせて、九十九は寝るのはソファでいい。実は、台本上には『寝室』と書かれていた部屋があったのですが、そこに一男を入れないだろうと思い、バイカム時代に企業仲間と密談するような隠し部屋ということにしたんです」 「そうやってイメージをギュウギュウに詰めていく作業も面白かった」と三浦さんは楽しそうに振り返る。

九十九が本当に好きなものだけを大量に揃えた。炭酸飲料とカップラーメンは広い部屋の中で主張している。

データ保存でなく、メモをそのまま貼り付ける、ちょっとアナログなところも。「九十九は自分の“価値”をずっと守っている男なんです」。

一男と九十九は大学の落語研究会で意気投合し、親友に。
10年以上経ったいまも、九十九はカセットで落語を聴い
ているようだ。

壁に飾られた絵は、この物件がバイカムの持ち物で、打ち合わせに使っていたときの名残り。

一男が3億円を持って訪ねてくると、九十九は自分がプロデュー スして豪遊パーティーを開催するのだった。 「パーティーシーンがあることから、大きなバルコニーをつくることにしました。部屋の中にたくさん人物がいて、大きな窓があり、その奥にも人がいると、雑多な感じが出せる。ポールダンサーに、板前も呼んだ出張寿司。2階の回廊部分いっぱいに花も飾りました」

「定期的にパーティーをやっている」設定のもと、部屋の中にはポールダンス用のポールが常に立てかけてある。可動式の舞台部分は、パティオに置かれている。

「映画にはでてこない部分を積み重ねないといけないことは多々ある。それができていないとキャラクターに人生の厚みがでてこないので、毎回キャラクターについてはかなり考えます」と三浦さん。 「いろんな人の人生や文化を知っておきたいから、仕事が終わるとよく海外に行くんですよ。未知の場所で、知らないおじいちゃんをナンパして(笑)、『今日泊めて』とお願いする。自分とは全く違う彼らの生活を自分の中にインプットするのは面白いし、美術ではそれをほかの人の人生にアウトプットすることもできる。僕はモロッコにも行ったことがありますが、その時自分が感じたことと、九十九や一男が感じたことは違うだろうし、その違いを表現できるのも面白いなって思います」

ペントハウスのような物件で、1フロアに2世帯のイメージ。玄関を入ってすぐの扉を開けると、大きな部屋がひとつ。階段を上がった先には、ゲストルームが4部屋ほどある6LDKの物件という設定。回廊の先にはベランダへ出る扉がある。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#115(2018年12月号 10月18日発売) 『億男』の美術について、美術監督 三浦さんのインタビューを掲載。
プロフィール

三浦真澄

miura masumi
80年青森県生まれ。美術助手として『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』『涙そうそう』(ともに06)、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(07)、『Last Message 海猿』(10)、『永遠の0』(13)などに参加。14年『百瀬、こっちを向いて。』で美術監督デビュー。CMやPVの美術も手がける。そのほかの作品に『サブイボマスク』(15)、『Floating Away』(16)などがある。
ムービー

『億男』

監督/大友啓史 原作/川村元気「億男」(文春文庫刊) 出演/佐藤健 高橋一生 黒木華 池田エライザ / 沢尻エリカ 北村一輝 藤原竜也 ほか 配給/東宝 (18/日本/116min) 借金を抱え、昼も夜も働き続ける一男はある日、3億円の宝くじを当てる。希望を抱きながらも、あまりの金額の大きさに怖くなり、大学時代の親友で億万長者になった九十九を訪ねることに。久々の再会に豪遊した次の朝、一男が目を覚ますと、九十九は3億円とともに消えていた。10/19~全国東宝系にて公開 ©2018映画「億男」製作委員会
『億男』公式HP
http://okuotoko-movie.jp
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