住野よるのベストセラー小説を浜辺美波、北村匠海というフレッシュなキャストを迎えて映画化した『君の膵臓をたべたい』。同級生の病を知り、わずかな時間を共に過ごす高校生の〈僕〉。教師になり、彼女の死と改めて向き合うことになる大人の〈僕〉。過去と現在、その両方に息づくキャラクターを美術として表現したのは、美術監督の五辻圭さん。今作では「本の集まる場所」が鍵となったようだ。
背景にいつも本が並ぶ空間
映画『君の膵臓をたべたい』では、原作小説で描かれた高校生の〈僕〉(北村匠海)と桜良(浜辺美波)の物語と、原作にはない、12年後に教師になったその後の〈僕〉(小栗旬)が描かれる。
「教師の〈僕〉の住まいは、滋賀県彦根市にある低層マンションの一室を借りて撮影しました。教師になって7、8年くらい、20代後半の公務員のお給料を考えると、家賃は10万円台前半くらいかなと。東京や大阪といった都心なら10万円台後半くらいしそうな物件。ここは都心から離れた場所なので、2DKくらいの広さがあってもいいんじゃないか、といった風に考えて決めていきました」
「教師の〈僕〉の住まいは、滋賀県彦根市にある低層マンションの一室を借りて撮影しました。教師になって7、8年くらい、20代後半の公務員のお給料を考えると、家賃は10万円台前半くらいかなと。東京や大阪といった都心なら10万円台後半くらいしそうな物件。ここは都心から離れた場所なので、2DKくらいの広さがあってもいいんじゃないか、といった風に考えて決めていきました」
進んで人とコミュニケーションを取らない〈僕〉は、昔から「本が友だち」だ。「〈僕〉はずっと本を読んでいる男の子だったので、背景にいつも本が映っているようにしたかったんです」と、五辻さん。高校では国語を教えていることもあって、仕事部屋の本棚には、日本文学や辞典などが並ぶ。一方、寝室の本棚には、高校時代に好きだった小説も。
「高校時代の〈僕〉の本を、現代の〈僕〉の本棚に持ってきています。高校のときの本棚は、純文学やミステリーなどの小説が中心。学生らしく『コツコツと好きな本を買っては本棚も増やしていった』、そんな雰囲気が出るようにしたくて、本棚もバラバラのものを重ねています」
「高校時代の〈僕〉の本を、現代の〈僕〉の本棚に持ってきています。高校のときの本棚は、純文学やミステリーなどの小説が中心。学生らしく『コツコツと好きな本を買っては本棚も増やしていった』、そんな雰囲気が出るようにしたくて、本棚もバラバラのものを重ねています」
〈僕〉が教師になったのは、クラスメイトの桜良の言葉がきっかけだった。クラスの人気者だった彼女との接点は、膵臓の病を患っているという秘密を偶然知ってしまったこと。
「桜良の家は裕福な家庭で、ひとりっ子だから可愛がられている。病気を患っていることもあって両親もなんでも与えているのだろうと。ただ、その “なんでもある部屋”を美術として見せてしまうと、どこか違和感が生まれてしまう。ですから、桜良の部屋は普通の女子高生らしく飾りました」
「桜良の家は裕福な家庭で、ひとりっ子だから可愛がられている。病気を患っていることもあって両親もなんでも与えているのだろうと。ただ、その “なんでもある部屋”を美術として見せてしまうと、どこか違和感が生まれてしまう。ですから、桜良の部屋は普通の女子高生らしく飾りました」
〈僕〉も訪れる、桜良の家のリビングには、広い部屋に対して少し小さく感じるテーブルやソファが並ぶ。「この部屋にはごちゃごちゃものを置くよりも、あえて空間をあけることで物悲しさを演出しました」
今回、一番大変だったと語るのは、高校の図書館。〈僕〉が、再び過去と向き合うようになる場所だ。撮影では滋賀県彦根市の旧豊郷小学校が使用された。
「図書館シーンのロケハンに初めて行ったとき、美しい光が入るとても素敵な場所だなと思いました。だけど、あれ?本がないぞ、と(笑)。そこには大きな机と椅子があるだけだったんです。まずは、書棚を全部つくって、本で埋めなければならなかった。この本を探してくる作業がとても大変でした。
廃校になった学校の図書館から万単位で借りてきたり、いろいろな場所から集めてもらったりしました。それらは全て持ち主さんに返却しなくてはいけないので、管理するのがまた大変で、スタッフは苦労していました。だけど、何もないところに図書館を作るという経験はなかなかできない。大変でしたが、楽しかったですね」
「図書館シーンのロケハンに初めて行ったとき、美しい光が入るとても素敵な場所だなと思いました。だけど、あれ?本がないぞ、と(笑)。そこには大きな机と椅子があるだけだったんです。まずは、書棚を全部つくって、本で埋めなければならなかった。この本を探してくる作業がとても大変でした。
廃校になった学校の図書館から万単位で借りてきたり、いろいろな場所から集めてもらったりしました。それらは全て持ち主さんに返却しなくてはいけないので、管理するのがまた大変で、スタッフは苦労していました。だけど、何もないところに図書館を作るという経験はなかなかできない。大変でしたが、楽しかったですね」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#107(2017年8月号 6月17日発売)『君の膵臓をたべたい』の美術について、五辻さんのインタビューを掲載。
Profile
プロフィール

美術監督
五辻 圭
itsutsuji kei
70年東京都生まれ。08年『ガチ☆ボーイ』で美術監督デビュー。おもな作品に、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(13)、『小野寺の弟・小野寺の姉』(14)、『映画 ビリギャル』(15)、『ちはやふる 上の句/下の句』(16)、『君と100回目の恋』(17)など。公開待機作に『泥棒役者』(11月公開)、『ちはやふる-結び-』(18年公開)がある。
Movie
映画情報

君の膵臓をたべたい
監督/月川翔 原作/住野よる 脚本/吉田智子 出演/浜辺美波 北村匠海 / 北川景子 小栗旬 配給/東宝 (17/日本/115min)
膵臓の病を患っていた同級生・山内桜良の日記を偶然手にとってしまい、彼女の唯一の理解者となってしまった〈僕〉。ふたりで過ごす時間は次第に増えていくが、その眩しい日々は長く続かなかった。彼女の死から12年――教師となった〈僕〉は、桜良の本当の想いに触れることになる。7/28〜全国東宝系にて公開
(C)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (C)住野よる/双葉社
君の膵臓をたべたい公式HP