累計発行部数110万部を突破した七月隆文の恋愛小説を、『僕等がいた 前篇/後篇』『青空エール』などで知られる恋愛映画の名手・三木孝浩が映画化した『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』。高寿(福士蒼汰)が一瞬で恋に落ちたのは、大きな秘密を抱えた愛美(小松菜奈)だった……。たった30日間の切ない恋。その舞台となる京都で、美術監督の花谷秀文さんは主人公の暮らしをどのように表現したのか?
手づくりの家具で、空間に“緩み”を持たせる
本作の舞台は、原作小説にもある、京都市左京区。「高校生の頃から、時代劇や坂本龍馬が大好きだった」花谷さんにとって、「京都は特別な思い入れのあるロケ地」なのだそう。出町柳(でまちやなぎ)駅から宝ヶ池駅に行く叡山(えいざん)電鉄の沿線に、京都の美大に通う主人公・高寿は暮らしている。
室内はリノベーションしてある設定で、キッチンは板の間、ベッドスペースは四角いベニアを切って並べた床にするなど、木を基調にセットでつくられた。「安普請に仕立ててあるけどもオシャレに見える」やわらかい雰囲気の空間だ。靴箱や木製のベッドは、花谷さんの手づくりなのだとか。
室内はリノベーションしてある設定で、キッチンは板の間、ベッドスペースは四角いベニアを切って並べた床にするなど、木を基調にセットでつくられた。「安普請に仕立ててあるけどもオシャレに見える」やわらかい雰囲気の空間だ。靴箱や木製のベッドは、花谷さんの手づくりなのだとか。

建物の年代を感じさせるのは、レトロな欄間やステンドグラスを使った窓。「外観を撮影した建物の建具をお借して、セットに組み込みました。玄関のドアや丸窓は、それらを参考に、いちからデザインしてつくったものです」
「『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』でお世話になって以来付き合いのある三重の林業を営む方にお願いし、マイチェーンソーで(笑)木を伐(き)ってこしらえました。手づくりの家具を置くことで、部屋に曲線が増えて空間全体に“緩み”ができる。高寿と愛美、ふたりのあたたかい空気を部屋にも加えたかったのです」
冒頭で、ちょっとダサめの男の子として登場する高寿。そのキャラクターを部屋に落とし込むために、生活感が漂うようにも意識したという。
「最初は昭和っぽい洋服ダンスやテレビも用意しましたが、それを置くとインテリア雑誌のようにかっこよくキマってしまうので、そういったものは外し、量販店のプラスチックの衣装ケースを置いたりしました」
冒頭で、ちょっとダサめの男の子として登場する高寿。そのキャラクターを部屋に落とし込むために、生活感が漂うようにも意識したという。
「最初は昭和っぽい洋服ダンスやテレビも用意しましたが、それを置くとインテリア雑誌のようにかっこよくキマってしまうので、そういったものは外し、量販店のプラスチックの衣装ケースを置いたりしました」
この部屋へ引っ越す前に高寿が暮らしていたのは、親友・上山(東出昌大)の家。京町家のようなうなぎの寝床(間口が狭く、奥行きの深い敷地)の古い一軒家だが、室内はオシャレなインテリアが並ぶ。
「上山はお金持ちの息子で、親が持っている家にひとりで住んでいる。そこに高寿が転がり込んできた、という裏設定を考えました。上山は着ている服からもわかるように、なかなかの洒落者で、きっと趣味を大事にしているんじゃないかと思い、アンティークのステレオセットや大きなソファなどを置きました。これは普通の大学生のインテリアじゃないですよね(笑)」
「上山はお金持ちの息子で、親が持っている家にひとりで住んでいる。そこに高寿が転がり込んできた、という裏設定を考えました。上山は着ている服からもわかるように、なかなかの洒落者で、きっと趣味を大事にしているんじゃないかと思い、アンティークのステレオセットや大きなソファなどを置きました。これは普通の大学生のインテリアじゃないですよね(笑)」

テレビやオーディオ機器が並ぶスペースは、もともと押入れだった所。「三重からもらったすのこを縦にはって間仕切りをして、そのすのこには帽子をかけられるように。単なる飾りではなく、生活空間であることを意識しています」
上山の部屋は、丹波口駅からほど近いギャラリーを借りて飾りこんだ。準備のために昨年末から京都入りしていた花谷さんは、ここで年を越したのだそう。
「このギャラリーでは普段からイベントなどもやっているんです。年越しはここでライブを聴いて、その後お鍋もご馳走になりました。そんな楽しい時間を過ごしながら、少しずつイメージを固めていきました」
「このギャラリーでは普段からイベントなどもやっているんです。年越しはここでライブを聴いて、その後お鍋もご馳走になりました。そんな楽しい時間を過ごしながら、少しずつイメージを固めていきました」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#104(2017年2月号 12月18日発売)
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の美術について、花谷さんのインタビューを掲載。
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の美術について、花谷さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術監督
花谷秀文
hanatani hidefumi
67年広島県生まれ。92年『トーキング・ヘッド』で美術監督デビュー。以降、多くの映画美術を手がける。『僕等がいた』前・後篇(12)に始まり、『くちびるに歌を』(15)、『青空エール』(16)と8本もの三木孝浩監督作品に参加。近作に『海難1890』(15)、『ヒーローマニア生活』(16)がある。
Movie
映画情報

ぼくは明日、昨日のきみとデートする
監督/三木孝浩 原作/七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社) 脚本/吉田智子 出演/福士蒼汰 小松菜奈 東出昌大 ほか 配給/東宝 (16/日本/111min)
京都の美大生・高寿はある日、電車で見かけた女性・愛美に一目惚れする。勇気を出して声をかけ、次に会う約束をとりつけようとすると、彼女は突然涙を流した……。切ない運命を背負った2人の30日間の恋の物語。12/17〜全国東宝系にて公開
©2016「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」製作委員会
ぼくは明日、昨日のきみとデートする公式HP