Room54

高台家の人々

2016.05.20

テレパシー能力を持つ3兄弟が暮らす

海の見えるモダンな洋館

美術監督北川深幸

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妄想癖のある不器用なOL・木絵(綾瀬はるか)と心が読めるテレパシー能力を持つイケメンエリート・高台光正(斎藤工)の恋を描くラブコメディ『高台家の人々』。「ごくせん」「デカワンコ」で知られる森本梢子の原作コミックを、『謎解きはディナーの後で』の監督・土方政人が実写化した。カワイイ妄想が次々と飛び出すファンタジックな世界観、主人公たちの住まいを美術監督の北川深幸さんはどのように表現したのだろうか?

いつもの日常にファンタジー性をプラス

物語の舞台は横浜。主人公の木絵と恋に落ちる名家・高台家の長男・光正が、妹と弟、両親と暮らしている大きな洋館は、鎌倉・葉山あたりに建っている設定だ。
「外観とエントランス、ダイニングなどの1階部分は神戸にあるジェームス邸で撮影しました。海も見えるので設定している立地との共通点もある。洋館は、映画の撮影ではよく使いますが、都内では狭い敷地に建っていることが多いので、廊下や階段が狭かったり、部屋が細かく分かれていたりする。その点、ジェームス邸は間取りも明快でした。エントランス、応接室、ダイニングとひとつひとつがシンプルに分かれていて撮影もしやすかったです」


2階にある家族が集うリビングと、祖父母の大きな絵が飾られた図書室はセットでつくられた。
「洋館というと古いアンティーク家具が並んでいるようなイメージですが、高台家は若い3兄弟とその両親が住んでいる家。祖父母のものももちろんあるけども、あまり古いものばかり集めないようにして、アンティーク調でありながらもモダンなものを揃えていこうと、装飾の田中宏さんとも相談して飾りました。
図書室はまるで時間が止まったような空間にしたかったので、基本的にはダークな感じで、ヨーロッパにあるシガールームのような雰囲気に。食事のあとにブランデーを傾けながら葉巻を吸う、そんな憩いの場です」

1階のシーンを撮影したジェームス邸に合わせ、セットでつくった2階部分の床も板間に。撮影所にあった昔の映画で使用した床材を活用し、様々な模様をモザイクのように組み合わせた。高級感を出すために色を塗り変えツヤを2倍くらい入れて仕上げたという。



ジェームス邸に合わせた内装だとシンプルすぎるため、リビングや図書室では壁紙を変えるなどして色を加えていった。



図書室の本棚には、洋書を中心に、乗馬の仕方など知識を育てる日本の書籍や小説を並べた。


妄想好きな木絵の部屋をつくる際に参考にしたのは、原作漫画。そこに描かれる実家の木絵の部屋には、絵本作家になりたかった昔の夢や大好きだった漫画が詰まっていた。
「難しかったのは、木絵が根っからのオタクであること。土方監督も、漫画や映画のDVDがたくさんある部屋がいいとおっしゃっていたけど、演じる綾瀬はるかさんのイメージとは重なりづらい。その接地点を見つけるのは苦労しました。『(500)日のサマー』という映画に出てくるヒロインのサマーが、自分の世界に入り込んでいるような女の子で、木絵のイメージに近かった。かわいいさとちょっとヘンテコな感じが混ざっている。そのミックス感をヒントに、女の子らしい小物を集めて、その中にオタクテイストをガンガン入れていきました(笑)」

空き物件を借りて壁の色などを塗り、つくり変えた木絵の部屋。原色ではなく、フランスにあるような渋めの色味を中心に使った。




「有閑倶楽部」や「お父さんは心配症」「ご近所物語」など、30代の女性が思わず「懐かしい!」とうれしくなってしまう少女漫画から「ONE PIECE」などの人気漫画まで、どっしりと積まれている。


1階にはダイニングルームや厨房、2階には家族で集まるリビングと図書室、3兄弟それぞれの部屋と夫婦の寝室。ほかにゲストルームがある想定。


映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#100(2016年6月号 4月18日発売)
『高台家の人々』の美術について、北川さんのインタビューを掲載。

Profile

プロフィール

美術監督

北川深幸

kitagawa miyuki

78年神奈川県生まれ。都築雄二氏に師事し、『ホテル ビーナス』『茶の味』(ともに04)などに美術スタッフとして参加。その後、種田陽平とともに『THE 有頂天ホテル』(06)、『ザ・マジックアワー』(08)、『ステキな金縛り』(11)など三谷幸喜作品に携わる。ドラマ『大空港2013』(WOWOW)で美術監督デビュー。近作に『ギャラクシー街道』がある

Movie

映画情報

高台家の人々
監督/土方政人 脚本/金子ありさ 原作/「高台家の人々」森本梢子(集英社「月刊YOU」連載) 出演/綾瀬はるか 斎藤工 ほか 配給/東宝 (16/日本/116min) 口下手で人づきあいが苦手、何かというとすぐ妄想の世界に入り込んでしまう木絵。そんな彼女の前に、名家・高台家の長男でありイケメンエリートの光正が現れる。実は光正は、人の心が読める特殊な能力をもっていた。6/4~全国東宝系にて公開 ©2016 フジテレビジョン 東宝 集英社 ©森本梢子/集英社
高台家の人々公式HP