真白という存在が空間を形づくる
七海が東京の片すみで一人暮らしをする部屋、新婚生活を送る世田谷のマンション、仮住まいの宿泊所……「今作のロケの候補地はどこも一癖二癖あるところで、岩井監督も制作部も不思議な場所を探してくるなとずっとワクワクしながら一緒に下見をしました」と美術監督の部谷京子さんは楽しそうに振り返る。
「七海が住み込みのバイトにやってくる豪邸は、台本では『東京都内の豪邸』とあったのですが、都内ではスケール感のある建物がなかなか見つからず、箱根にある建物をお借りしました。箱根には何度も足を運びました。その帰りに岩井監督が、展覧会やイベントにも誘ってくださって、今回はお仕事以外の時間も共有することが多かったんです。同じものを見たり、話しあったりする中で、この作品に反映されている今の日本やネットの世界の出来事が現実なのだなと実感できていきました」
「七海が住み込みのバイトにやってくる豪邸は、台本では『東京都内の豪邸』とあったのですが、都内ではスケール感のある建物がなかなか見つからず、箱根にある建物をお借りしました。箱根には何度も足を運びました。その帰りに岩井監督が、展覧会やイベントにも誘ってくださって、今回はお仕事以外の時間も共有することが多かったんです。同じものを見たり、話しあったりする中で、この作品に反映されている今の日本やネットの世界の出来事が現実なのだなと実感できていきました」
オーナーが外遊の間、七海がメイドとして管理を頼まれたこの豪邸には、先住メイドの真白が自由に生活していた。住まいというには規格外のお城のような空間で、1階は天井も高く開放感のある広いリビングがある。その一角には、真白の生活スペースである寝床や、巨大なアイランドキッチンのような場所も。
「ここで真白の生活をコンパクトに見せられたら面白いと思いました。たとえば、朝帰ってきてソファベッドに倒れこんじゃうとか、キッチンで朝ごはんくらいはつくるかもしれないとか、もしかしたら、夜な夜なパーティーをやっていたかも……という風に。見れば見るほど、真白の生活が不思議に感じられるような部屋にしたかったんです。誰かが住んでいる部屋をつくるとき、私にとって大切なのはその役を演じる俳優さんの肉体や声、雰囲気。そういう意味で演じるCoccoさんはとてもミステリアスで真白そのものだった。だから、ここにCoccoさんがいたら……とイメージして考えていきました」
「ここで真白の生活をコンパクトに見せられたら面白いと思いました。たとえば、朝帰ってきてソファベッドに倒れこんじゃうとか、キッチンで朝ごはんくらいはつくるかもしれないとか、もしかしたら、夜な夜なパーティーをやっていたかも……という風に。見れば見るほど、真白の生活が不思議に感じられるような部屋にしたかったんです。誰かが住んでいる部屋をつくるとき、私にとって大切なのはその役を演じる俳優さんの肉体や声、雰囲気。そういう意味で演じるCoccoさんはとてもミステリアスで真白そのものだった。だから、ここにCoccoさんがいたら……とイメージして考えていきました」
ミュージックビデオやCM、岩井俊二プロデュースのドラマ『謎の転校生』と、いくつか岩井監督とともに仕事を重ねてきた部谷さんだが、岩井映画への参加は今回が初めて。その現場で印象的だった出来事をたずねてみた。
「一番うれしかったのは、1階にあるピアノを、岩井監督と安室役の綾野剛さんが即興で弾いてくださったこと。岩井さんはもともと音楽家でもありますが、綾野さんまでも!?と。後で考えたらドラマの役づくりで練習されていたみたいです。その音楽をみんなで共有した時間はすごく特別でした。まるで真白の部屋でパーティーをしているような感じで、すごく楽しかったです」
「一番うれしかったのは、1階にあるピアノを、岩井監督と安室役の綾野剛さんが即興で弾いてくださったこと。岩井さんはもともと音楽家でもありますが、綾野さんまでも!?と。後で考えたらドラマの役づくりで練習されていたみたいです。その音楽をみんなで共有した時間はすごく特別でした。まるで真白の部屋でパーティーをしているような感じで、すごく楽しかったです」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#99(2016年4月号 2月18日発売)『リップヴァンウィンクルの花嫁』の美術について、部谷さんのインタビューを掲載。
Profile
プロフィール
美術監督
部谷京子
heya kyoko
広島県生まれ。大学在学中に円谷プロダクションで美術助手のアルバイトを始め、映画美術の道へ。92年『シコふんじゃった。』(周防正行監督)で美術監督デビュー。おもな作品に、『Shall we ダンス?』『陰陽師』『壬生義士伝』『それでもボクはやってない』『天地明察』『あん』など。09年から地元広島で映画祭を主宰。14年から広島国際映画祭に改称、代表を務める。
Movie
映画情報
リップヴァンウィンクルの花嫁
監督・脚本/岩井俊二 出演/黒木華 綾野剛 Cocco 配給/東映(16/日本/180min)
SNSで知り合った男性と結婚することになった七海(黒木)は、式の出席者が少ないことから代理出席のバイトをなんでも屋の安室(綾野)に依頼。しかし新婚生活は長くは続かず、義理の母に浮気の疑罪を着せられ家を追い出されてしまう。苦境に立たされた彼女に、安室は怪しいバイトを紹介する……。3/26~公開
©RVW フィルムパートナーズ
リップヴァンウィンクルの花嫁公式HP