三谷幸喜監督が、主演に香取慎吾、ヒロインに綾瀬はるかを迎えて、自身初のSF映画に挑戦した『ギャラクシー街道』。舞台は、スペースコロニー「うず潮」と地球とを結ぶスペース幹線道路・ルート246666(通称、ギャラクシー街道)の中央にひっそりと佇むハンバーガーショップ。『THE有頂天ホテル』から種田陽平とともに三谷監督作に参加している美術の北川深幸さんに訊いた、新たな三谷ワールドが出来上がるまで。
新しいチャレンジに溢れた三谷ワールド
開通して150年、老朽化が著しいギャラクシー街道に位置するハンバーガーショップ「サンドサンドバーガー・コスモ店」が今作の舞台。店内には大きな窓があり、そこには広大な宇宙が広がっている。「お芝居をしているその背景に、いつも宇宙があるようにしたかった」と美術の北川深幸さん。
「三谷幸喜監督から『バクダッド・カフェ』のようにという話もあり、ハンバーガーショップは50~60年代のアメリカンダイナーの雰囲気でと提案しました。今回はこれまでの三谷作品にないチャレンジがあります。SF作品ということはもちろん、物語も少しダークというか、エログロい(笑)。世界観のトーンも明るいものが多かったけども、切り替えています。私の中では、エドワード・ホッパーの『ナイトホークス』という絵のような。夜の暗闇の中で食堂だけが光っていて、その奥には廃れた街が広がっている、というイメージです」
「三谷幸喜監督から『バクダッド・カフェ』のようにという話もあり、ハンバーガーショップは50~60年代のアメリカンダイナーの雰囲気でと提案しました。今回はこれまでの三谷作品にないチャレンジがあります。SF作品ということはもちろん、物語も少しダークというか、エログロい(笑)。世界観のトーンも明るいものが多かったけども、切り替えています。私の中では、エドワード・ホッパーの『ナイトホークス』という絵のような。夜の暗闇の中で食堂だけが光っていて、その奥には廃れた街が広がっている、というイメージです」
新しい試みは美術にも表れている。「三谷さんがあまり汚れたものが好きじゃないことと、やはり作品がファンタジーなので、リアルな汚しを入れることはあまりなかったのですが、今回は『とにかく古くしたい』というリクエストがありました」いまは忘れ去られてしまった街道沿いの店の「寂れた感じ」を出すため、セットにはエイジングを施したり、傷をつけたりと、かなり手を入れたのだとか。「日本のジメッとした汚れとは違い、宇宙なのでちょっと乾いたような、ホコリの溜まった汚れにしようと。薄汚れた感じにはならないよう、鮮やかな色も入れて、タイルを貼ったりもしています」
目指したのは「現代の昭和居酒屋のように、宇宙で暮らしている人間が来たら懐かしさを感じる空間」。しかし、ここは宇宙ステーション。一旦通用口である廊下に出ると、60~70年代のSF映画に出てくるような内装に変わる。「ここでも古さはほしいので、昔の映画をたくさん観てディテールをチェックしました。参考になったのは『エイリアン』(79)。実はあの宇宙船にはすごく汚しが入っているんですよ。あとは『スター・ウォーズ』(78)とか。当時つくられた宇宙船の“嘘だけどリアルな汚れ”を目指しました」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#97(2015年12月号 10月17日発売)『ギャラクシー街道』の美術について、北川さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術
北川深幸
miyuki kitagawa
78年神奈川県生まれ。都築雄二氏に師事し、『ホテル ビーナス』『茶の味』(ともに04)などに美術スタッフとして参加。その後、種田陽平とともに『THE 有頂天ホテル』(06)、『ザ・マジックアワー』(08)、『ステキな金縛り』(11)など三谷幸喜作品に携わる。ドラマ『大空港2013』(WOWOW)で美術監督デビュー。CM、舞台美術など幅広く手掛けている。
Movie
映画情報

ギャラクシー街道
脚本・監督/三谷幸喜 出演/香取慎吾 綾瀬はるか ほか 配給/東宝 (110min/15/日本)
西暦2265年。「ギャラクシー街道」の中央にひっそりと佇むハンバーガーショップ・サンドサンドバーガーに集まるのはちょっと風変わりな宇宙人たち。ある日、妻・ノエ(綾瀬)の浮気を疑う店主・ノア(香取)のもとに昔の彼女・レイ(優香)が現れ……。10/24~全国東宝系にて公開
©2015フジテレビ 東宝
ギャラクシー街道公式HP