朝倉ジョージの原作漫画を、田口トモロヲ監督が実写化した『ピース オブ ケイク』。ついつい恋愛に翻弄されてしまう、主人公・志乃(多部未華子)と、同じアパートの隣に住む京志郎(綾野剛)が織り成す、“リアルな恋愛”を描く。田口監督作品にはデビュー作『アイデン&ティティ』から3作品とも参加しているという、美術監督の丸尾知行さんは、古い木造アパートに住む二人の部屋を、どのように表現したのだろうか。
対比で見せる、女と男のリアルな暮らし
主人公・志乃が恋にけじめをつけるため、新しい暮らしを求めてやってきた木造の古いアパート。東京都小平市にある設定で、実際撮影に使ったアパートも同じ市内だったという。志乃の部屋は1階の角部屋。引っ越したその夜、隣に住む京志郎と出会ってしまう。
「部屋の広さに関しては、女の子の一人暮らしであればいいかなと思ったのですが、実は京志郎の部屋には、彼女のあかり(光宗薫)がいる。二人暮らしを考えると少し狭いかなと思いました。そこで、彼の部屋は押し入れを解放して、その中を飾りこみました。あって当たり前のものでも、表に出しておくと空間が狭くなりますから」志乃は京志郎に彼女がいると知りつつものめり込んでいく。その部屋は、志乃を取り巻く環境の変化によって、変わっていく。
「部屋の広さに関しては、女の子の一人暮らしであればいいかなと思ったのですが、実は京志郎の部屋には、彼女のあかり(光宗薫)がいる。二人暮らしを考えると少し狭いかなと思いました。そこで、彼の部屋は押し入れを解放して、その中を飾りこみました。あって当たり前のものでも、表に出しておくと空間が狭くなりますから」志乃は京志郎に彼女がいると知りつつものめり込んでいく。その部屋は、志乃を取り巻く環境の変化によって、変わっていく。
「植物のクワズイモを育てているので、それが部屋の中では大きなポイントになる。それが映えるように、寝床はベッドではなくマットレスを選びました。引っ越してしばらくは段ボールが並べてある状態。劇団の衣装を手がけるようになってからは、ミシンや、洋裁用のボディ、デザイン画などを足していきました。全体の色味はどちらかというと、女の子っぽいというより、明るい色を選んでいきましたね。
逆に京志郎の部屋はちょっと暗めにしています。あかりは転がり込んだだけなので、基本的に部屋の中は彼の趣味でまとめました。レトロ、というよりはちょっと昔風にしたかったんです」京志郎の住まいで最もポイントになるのは、庭の野菜だろう。植物を育てるのが苦手な志乃とは反対に、あかりが世話をしている菜園にはたくさんの野菜が活き活きと並ぶ。
「庭をつくるのには1週間くらいかかったでしょうか。トマトはすぐにダメになっちゃうので、トマトを使う重要なシーンでは、タイミングを合わせるのが難しかった。小平という場所柄、周りに畑もあったので、農家の方に相談したりもしました」
「庭をつくるのには1週間くらいかかったでしょうか。トマトはすぐにダメになっちゃうので、トマトを使う重要なシーンでは、タイミングを合わせるのが難しかった。小平という場所柄、周りに畑もあったので、農家の方に相談したりもしました」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#96(2015年10月号 8月18日発売)『ピースオブケイク』の美術について、丸尾さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術監督
丸尾知行
maruo tomoyuki
53年生まれ。ATG、円谷プロを経て独立。近作は、『きいろいゾウ』『脳男』『だいじょうぶ3組』『爆心 長崎の空』(すべて13)、『赤×ピンク』『ルパン三世』(ともに14)、『チョコリエッタ』『娚の一生』(ともに15)など多数。『残穢[ざんえ]-住んではいけない部屋-』(中村義洋監督)は、16年1/30公開予定。
Movie
映画情報

ピース オブ ケイク
監督/田口トモロヲ 原作/ジョージ朝倉『ピース オブ ケイク』(祥伝社 フィールコミックス) 出演/多部未華子 綾野剛 松坂桃李 木村文乃ほか 配給/ショウゲート(15/日本/122min)
仕事も恋愛も、なんとなく流されて生きてきた恋ベタな女の子・志乃は、このままではダメだとアパートへ引っ越し新しい生活を始める事に。しかし、隣人の男性・京志郎と出会い、志乃の中の何かが動き出してしまう……。
ピース オブ ケイク公式HP