『おおかみこどもの雨と雪』で知られるスタジオ地図が贈る、細田守監督最新作『バケモノの子』。人間の子ども・九太と、バケモノの熊徹、ふたりが師弟関係を結びともに成長していく感動の冒険物語だ。今作の美術設定を手がけたのは『ALWAYS 三丁目の夕日』など数多くの実写作品を手がけ、細田作品へは三度目の参加となる上條安里。渋谷によく似たバケモノの都市・渋天街や、人間とバケモノが暮らす一軒家など、ファンタジーでありながら、写実的な世界観はいかに出来上がったのか。
渋谷のような渋天街と石造りの一軒家
物語のおもな舞台、バケモノ界にある都市・渋天街(じゅうてんがい)のベースとなったのは、リアルな東京都渋谷の街並みだ。
「いまは高い建物が多いから気付きにくいけど、その名の通り渋谷は谷になっているんです。渋天街はその形状に合わせて、実際より谷の深さを倍ぐらいにして、現在の渋谷に重ねるようにつくりました。渋天街の入り口にある門は三千里薬品のネオンに似ていますが、それは細田守監督のアイデアです。SHIBUYA109がある場所にはよく似た外観の給水塔を建てたりしています。渋谷ヒカリエの場所には、昔同じ所にあった五島プラネタリウム(2001年閉館)。僕は渋谷で子供時代を過ごしたので、あの建物はどうしても入れたかったんです」
「いまは高い建物が多いから気付きにくいけど、その名の通り渋谷は谷になっているんです。渋天街はその形状に合わせて、実際より谷の深さを倍ぐらいにして、現在の渋谷に重ねるようにつくりました。渋天街の入り口にある門は三千里薬品のネオンに似ていますが、それは細田守監督のアイデアです。SHIBUYA109がある場所にはよく似た外観の給水塔を建てたりしています。渋谷ヒカリエの場所には、昔同じ所にあった五島プラネタリウム(2001年閉館)。僕は渋谷で子供時代を過ごしたので、あの建物はどうしても入れたかったんです」
バケモノの熊徹が住む家は、道玄坂をのぼりきった百軒店商店街あたりに建っている設定。渋天街は渋谷と違い南国のような暖かな気候で、間取りも開放感あふれるつくりになっている。
「部屋に入ったときに『怖い』というより、『かわいい』という印象が残るようにしました。壁の質感も、日本的なウェットな感じではなく、南方の国のような乾いた感じがでるように」
インテリアでひときわ目をひくのが、リビングに置かれた大きなソファ。熊徹のベッド代わりだ。
「これは昔、熊徹にたくさん弟子がいて羽振りが良かったころに買った1点もの。家の中で豪華な品はそれだけです。九太が来たばかりのころは部屋が散らかり放題。熊徹には、片付ける才能がないんです(笑)。ふたりが一緒に住むようになってからは、九太が弟子として部屋を片付けるようになります。そこから設定も大きく変えました。壁の汚しをどの程度にするか、どのような小物を置いていくか、監督と何度もやりとりしていくうちに、部屋には何にもなくなってしまいました(笑)。それは九太の性格を考えて行き着いたところです」
「これは昔、熊徹にたくさん弟子がいて羽振りが良かったころに買った1点もの。家の中で豪華な品はそれだけです。九太が来たばかりのころは部屋が散らかり放題。熊徹には、片付ける才能がないんです(笑)。ふたりが一緒に住むようになってからは、九太が弟子として部屋を片付けるようになります。そこから設定も大きく変えました。壁の汚しをどの程度にするか、どのような小物を置いていくか、監督と何度もやりとりしていくうちに、部屋には何にもなくなってしまいました(笑)。それは九太の性格を考えて行き着いたところです」
細田監督作品のおもしろい点は「スタッフの使い方」という上條さん。
「僕は実写作品がメインで、これまでアニメーションに関わったのは細田さんの作品だけなんです。衣裳はスタイリストの伊賀大介さんが担当していますしね。ただ、今回は細田さんからのリクエストが『おおかみこどもの雨と雪』に比べて、50倍ぐらいありました(笑)」
「僕は実写作品がメインで、これまでアニメーションに関わったのは細田さんの作品だけなんです。衣裳はスタイリストの伊賀大介さんが担当していますしね。ただ、今回は細田さんからのリクエストが『おおかみこどもの雨と雪』に比べて、50倍ぐらいありました(笑)」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#95(2015年8月号 6月18日発売)『バケモノの子』の美術について、上條さんのインタビューを掲載。
渋谷区の物件を探す
Profile
プロフィール

美術設定
上條安里
jojo anri
62年東京生まれ。85年に美術デザイン会社、サンク・アールに入社、CMなどを手がける。96年に『7月7日、晴れ』で初めて映画美術として参加。以降、山崎貴監督作をはじめ、数多くの映画で活躍。『永遠の0』(13)では、日本アカデミー賞最優秀美術賞を受賞。細田監督作品への参加は『サマーウォーズ』(09)、『おおかみこどもの雨と雪』(12)に続き3作目。
Movie
映画情報

バケモノの子
監督・脚本・原作/細田守 作画監督/山下高明 西田達三 美術監督/大森崇 髙松洋平 西川洋一 美術設定/上條安里 企画・制作/スタジオ地図 配給/東宝 (15/日本/119min)
バケモノ界の宗師となるため、弟子を探していた熊徹。ひとりぼっちで渋谷をさまよっていた少年・九太。ふとしたことから出会ったふたりは師弟関係を結び、互いに成長を遂げていく。冒険、アクション、淡いロマンスがつまったエンターテイメント感動作。7/11~全国公開</br>
©2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS
バケモノの子公式HP