『ヴァイブレータ』『余命1ヶ月の花嫁』『きいろいゾウ』など、様々な愛の物語を手がけてきた廣木隆一監督による最新作『娚の一生』。山に囲まれた祖母の家に移り住んだ主人公・つぐみ(榮倉奈々)の前に現れた、大学教授の海江田(豊川悦司)。大人なのに不器用なふたりは、やがて恋に落ちる――。ひとりで暮らすにはあまりにも広い古民家からは、自然の空気や四季を感じる温度が伝わってくる。五感に加えて、恋心も刺激するこの住まいはどのようにつくられたのか?
人柄を表す、すっきりとした日本間
『娚の一生』の影の主役といえるのが、祖母の家。緑の山々に囲まれた大きな古民家は、三重県伊賀市上野で見つかった。入り口をはいると、すぐ右手に染色家だった祖母の工房、その奥に大きな母屋がある。都会での仕事と不毛な恋に疲れ、この家にやってきた主人公のつぐみは、ここでひっそりと暮らすことを決める。
「祖母は昔、大学でも染織を教えていたので、母屋の中には研究に使っていただろう書類関係を置いている勉強部屋をつくったりして、趣味で染め物をやっているおばあさんに見えないようにしました。工房に置いてある道具や、染料などの材料は、美術部の手伝いに来てくれた男の子の叔母さんが、京都で染織を実際にやってらっしゃる方だったので、飾り用にいろいろお借りして配置しました」。
病気で急逝した祖母の葬式を終えた翌朝、生前に離れの鍵を預かったという大学教授・海江田が現れる。そして奇妙な同居生活が始まるのだが、そのふたりの仲の変化は食事の場面でも表現されている。
病気で急逝した祖母の葬式を終えた翌朝、生前に離れの鍵を預かったという大学教授・海江田が現れる。そして奇妙な同居生活が始まるのだが、そのふたりの仲の変化は食事の場面でも表現されている。
「ふたりの距離が縮まるにつれ、海江田は段々家の奥の部屋で食事をとるようになります。色味に気遣ったのは、キッチン。最初棚は白っぽかったのですが、ちょっとバランスが悪かったので、全部木製の色に変えました。ブルーのタイルはそのまま活かしましたね。廣木隆一監督は床の模様が目を引くとあまり気に入ってなかったみたいだけども、そのまま活かしました(笑)」。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#91(2015年2月号 12月18日発売)『娚の一生』の美術について、丸尾さんのインタビューを掲載。
Profile
プロフィール

美術監督
丸尾知行
maruo tomoyuki
53年生まれ。ATG、円谷プロを経て独立。『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『軽蔑』(11)、『100回泣くこと』(13)など、廣木隆一監督作にも数多く参加。近作に、『ピカンチ☆★☆ LIFE IS HARD たぶんHAPPY』『ルパン三世』(ともに14)など。公開待機作に『チョコリエッタ』(15年1/17公開)、『ピース オブ ケイク』(15年秋公開)
Movie
映画情報

娚の一生
監督/廣木隆一 原作/西炯子 出演/榮倉奈々 豊川悦司 向井理 ほか 配給/ショウゲート(14/日本/118min)
仕事にも恋愛にも疲れ、ひとり田舎にある祖母の一軒家で暮らすことにしたつぐみ。期せずして祖母が他界してしまった矢先、家の離れの鍵を預かったという、大学教授・海江田がやってくる。海江田は半ば強引に、その離れで暮らしはじめるのだが……。
2/14〜全国公開 © 2015 西炯子・小学館/「娚の一生」製作委員会
娚の一生公式HP