2011年、大森立嗣監督によって映画化された『まほろ駅前多田便利軒』。2013年には『まほろ駅前番外地』としてドラマ化した人気シリーズが再びスクリーンに帰ってくる! まほろ駅前で便利屋を営む、多田(瑛太)と助手の行天(松田龍平)の、事務所兼住まいである“多田便利軒”。前の事務所を出ることになり引っ越してきたふたりの新天地を、美術の平井亘さんと、装飾の渡辺大智さんはどのようにつくり上げたのか?
雑居ビルの一室に“人の温度”を加える
まほろ駅前にある多田便利軒は、多田と助手の行天が便利屋を営みながらふたり暮らしをしている雑居ビルの一室。“まほろ市”のモデルとなっている東京都町田市、町田駅近くにある雑居ビルを活用し、外観はロケ撮影された。近所にはタイ料理店やゲームセンターもあり、その猥雑とした雰囲気が“まほろ”の世界観にしっくりくる。ビルの2階の窓に「囲碁」と書いてあったことから、美術の平井亘さんのこだわりで、内観も囲碁教室を改装したセットになったという。「外観を決める前にセットも同時進行で進めないといけない状況だったので、つじつまを合わせるのに、かなり試行錯誤しました(笑)」。
映画1作目に続き、今作でもメガホンをとるのは、大森立嗣監督。「大森監督は人の体温を感じない、冷たい感じが好きなんです」と話すのは、1作目にも助手として参加した装飾の渡辺大智さん。「今回の現場では、その中でもどう温度を出していくかが大事でした」。
「壁には通常は使う事を嫌う壁紙をあえて使って普通っぽさを出し、さらにタバコのヤニで汚れた感じを。床やキッチンの壁のタイルには、緑のさし色を使用してアクセントにしました」と平井さん。
「壁には通常は使う事を嫌う壁紙をあえて使って普通っぽさを出し、さらにタバコのヤニで汚れた感じを。床やキッチンの壁のタイルには、緑のさし色を使用してアクセントにしました」と平井さん。
さらに、渡辺さんも装飾において色を巧みに使って、「窓のブラインドは、壊れて取り替えたことにして、一部を黄色にしました。『幸せの黄色いハンカチ』の色ですね(笑)。デスクはよくあるグレーのオフィス机が嫌だったので色を塗りました。これはブルートレインのブルー(笑)。冷たい感じにならないように柔らかい青にしています。こういう細かい色は結局画には映らないのですが、スタッフやキャストがセットに初めて入ったときに全体の印象が変わるんです。冷たく感じるのか、温かく感じるのか。その感覚は、意外と作品に反映されると思っています」。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#90(2014年10月号 8月18日発売)『まほろ駅前狂騒曲』の美術について、平井さん×渡辺さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

hirai wataru(左)
73年三重県生まれ。95年『この窓は君のもの』で映画界入り。美術助手の経験を経て、映画『波(2011)』をはじめ、ドラマ『まほろ駅前番外地』(テレビ東京)、CMなど幅広いジャンルの作品に参加。『まほろ駅前狂騒曲』が美術監督デビュー作となる。
watanabe diechi(右)
81年東京都生まれ。WDT代表。装飾として、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)でデビュー。近作に『許されざる者』(13)、『クローズEXPLODE(エクスプロード)』(14)、『るろうに剣心』シリーズ(13-14)、など。15年の公開待機作に『海月姫』がある。
Movie
映画情報

まほろ駅前狂騒曲
監督/大森立嗣 原作/三浦しをん 出演/瑛太 松田龍平 高良健吾 真木よう子 永瀬正敏 ほか 配給/東京テアトル リトルモア(14/日本/124min)
まほろ駅前で便利屋「多田便利軒」を営む多田とその助手の行天。2013年の年の瀬に、行天の元妻から、娘のはるを預かってほしいという依頼が舞い込んできた! ふたりは慣れない子供の世話に悪戦苦闘するのだが……。10/18〜新宿ピカデリーほか全国公開
©2014「まほろ駅前狂騒曲」製作委員会
まほろ駅前狂騒曲公式HP