Room29  

2014.5.9

雑居ビルの一室が住まいに変身

親子のこだわりがつまった店舗兼住居のミニマムな空間

美術監督 原田恭明

すべての人間を操れる男(藤原竜也)と、唯一操れない男・終一(山田孝之)との生死をかけた壮絶な戦いを描く『MONSTERZ モンスターズ』。『リング』『クロユリ団地』の中田秀夫監督が手がける、迫力のサスペンスアクション映画だ。アクションシーンの舞台にもなる、雲井のギター店は、店舗や作業スペースの奥に居住空間を設置。美術監督の原田恭明さんは、この部屋にどのようにキャラクターの個性を映したのだろうか?

壁一面に世界地図を描いた個性的なダイニング

交通事故にあい、奇跡的に助かった終一(山田孝之)が、車を運転していた雲井(田口トモロヲ)を訪ねてやって来るギター店。千代田区という場所、社長と書かれた名刺を頼りに、慰謝料を期待しつつやって来るが、あまりに小さな雑居ビルで終一はがっかりする。 「実際撮影したのは浜松町駅付近の雑居ビルです。周りにはきれいなオフィスが並んでいるところに古い建物がある場所を制作部に探してもらいました。」 事故の慰謝料変わりに、終一はその店で働かせてもらう事に。セットでつくられた店内には、新品のギターから、修理用の専門道具などがずらりと並ぶ。

コンクリートの古いビルながら、店内の壁は木目調に統一し、レトロでこだわりのある雰囲気を演出。ロケで撮影したビルの外観の窓もセットに合わせて少し加工したのだとか。

作業スペースの奥には、娘の叶絵(石原さとみ)と暮らす居住スペースも。叶絵は、大好きな地図に関する本を退職金で自費出版しようと会社を辞めてしまう程、大の地図マニアだ。 「最初は共有スペースであるダイニングルームの壁中に地図を貼る事で叶絵の趣味を表現しようとしていたのですが、小さい地図だと映ったときに分かりづらい」 そこで、原田さんは「父親もギター好きが高じてお店をやっているような人だから、娘も思いあまって壁に地図を描いてしまったという設定にしたらどうだろう?」と提案し、壁に大きく世界地図を描く事にしたのだという。

装飾部によって、物語に添って集められた様々な国の
地図や資料が並ぶ。

壁一面に描かれた手書きの世界地図は、背景を描く専門家
によるもの。色はパステル系で、控えめながらも女性ら
しさを感じさせる。

「ダイニングでの会話劇も結構あったので、それぞれの背景に何気なく入っているとおもしろいんじゃないかと考えました。地図は緑と青、黄色で色分けしていて、それぞれに意味があるんです。実は叶絵が行った事がある国、これから行こうとしている国、行けない国に分けています。これは僕だけの楽しみでやってみたのですが(笑)、よく観ているときっとどの国か分かりますよ」

ショップスペースには販売と作業場、応接スペースを上手に配置し、居住スペースは最小限の広さに。バスルームとトイレは映画には登場しないので想定の位置。ダイニングの奥にもプライベートルームがある設定で扉を取り付けた。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#88(2014年6月号 4月18日発売)
『MONSTERZ』の美術について、原田さんのインタビューを掲載。
プロフィール

原田恭明

harada yasuaki
59年愛知県生まれ。フリーの美術助手を経て、87年『シャコタン☆ブギ』でデビュー。『クヒオ大佐』(09)、『GANTZ』シリーズ(11)、『貞子3D』(12)、『ガッチャマン』(13)など、数多くの話題作に参加。映画だけでなく、CMも多数手がける。近作に、『偉大なる、しゅららぼん』(14)がある。
ムービー

『MONSTERZ』

監督/中田秀夫 出演/藤原竜也 山田孝之 石原さとみ ほか 配給/ワーナー・ブラザース映画 (14/日本/111min) ひと目見るだけですべての人間を操る能力をもつ“男”(藤原)は、親と決別し、20年間孤独に生きてきた。そんな彼の前に、操れない唯一の男・田中終一(山田)が現れる。これまで築いてきた自分の世界を守るため、終一を抹殺しようと決意するのだが、終一もまた、特別な能力を持っていたのだった。5/30〜全国公開 ©2014「MONSTERZ」FILM PARTNERS
『MONSTERZ』公式HP
http://wwws.warnerbros.co.jp/monsterz-movie/index.html
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