見習い魔女・キキの成長を描く、角野栄子原作による永遠の名作『魔女の宅急便』。宮崎駿が手がけたアニメーション映画、蜷川幸雄によるミュージカルを経て、ジャパニーズ・ホラーの旗手・清水崇監督により初めて実写映画化された。美術監督を務めたのは、『映画 ひみつのアッコちゃん』で女の子の憧れの世界を作り上げた岩城南海子さん。キキが生きる、キュートで愛おしい世界はどのように出来上がったのか?
自然のアイテムを上手に取り入れた暖かい家
山肌にあり、室内の半分は岩壁を掘って建てたという設定のキキの実家。「東洋の岸壁の家や、チベット、シルクロードあたりの写真集を参考にした」というセットは、人間の生活から離れたような幻想的な雰囲気に仕上がった。
両開きの入り口を開けると、魔法で薬をつくるお母さん・コキリのお店があり、カウンターや天井にはハーブやドライフラワーが並ぶ。「コキリはほうきで飛べるので、高い所にも物を置きました。だから、(岩の壁を掘る形でつくった)小さな勉強スペースも階段やハシゴはつけていないんです」
両開きの入り口を開けると、魔法で薬をつくるお母さん・コキリのお店があり、カウンターや天井にはハーブやドライフラワーが並ぶ。「コキリはほうきで飛べるので、高い所にも物を置きました。だから、(岩の壁を掘る形でつくった)小さな勉強スペースも階段やハシゴはつけていないんです」
店の奥のらせん階段を登ると、中2階には暖炉のある広い居間、その壁にはまた穴を掘ってつくった形の、キキの部屋とお父さんの書斎がある。「部屋を区切ってしまうと普通のリアルな家になってしまう」ため、天井を高くし、すべてのスペースがつながった広々とした空間を演出。黄色やベージュをキーカラーにした暖かい雰囲気の家の中で、一番カラフルな場所がキキの部屋。「年頃の女の子なので、ファッションに興味があるはずだからと大きい鏡を置いたり、自分のスペースは隠したいだろうから、ベッドの上には天蓋を付けたりしました」
13歳になり、本物の魔女になるため旅立つキキ。彼女の第二の部屋となるのが、居候をする “グーチョキパン屋”。町の目印でもある風車小屋は小豆島をロケハンして見つけたという。「倉庫につかっているという設定の風車小屋の2階に、キキの簡易的な生活スペースをつくりました」。その風車に合わせ、「和洋折衷のイメージ」で可愛らしいパン屋を建てた。「最初は撮影が終われば壊す予定だったのですが、地元の方がご覧になって、是非残したいと言ってくださったんです。それで、ロケ地の近くのオリーブ園に移築することになりました。映画が公開する頃には、実際に見る事が出来ると思います」

まるでデザイン住宅のような、ユニークな間取り。天井が高く、1階から中2階は仕切りがなく、居間からは下のショップスペースを見ることができる。家族の共有スペースには、大きな暖炉を。オープンな間取りだが、それぞれのプライベートスペースも確保。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#87(2014年4月号 2月18日発売)『魔女の宅急便』の美術について、岩城さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術監督
岩城南海子
iwaki namiko
76年東京都生まれ。『さくらん』(07)で美術監督デビューし、日本アカデミー賞美術賞受賞し、注目を集める。主な作品に、『白夜行』(10)、『洋菓子コアンドル』(10)、『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 勝どき橋を封鎖せよ』(11)、『映画 ひみつのアッコちゃん』(12)がある。
Movie
映画情報

魔女の宅急便
監督/清水崇 原作/角野栄子 出演/小芝風花 尾野真千子 広田亮平 筒井道隆 宮沢りえ ほか 配給/東映(14/日本/108min)
13歳になった見習い魔女のキキは、「見知らぬ町で1年暮らす」という魔女の掟に従い、黒猫のジジと旅に出る。やがて辿り着いたのは海辺の町・コリコ。おソノが営むパン屋に居候しながら、お届けもの屋「魔女の宅急便」を始めるのだが……。3/1〜全国公開
©2014「魔女の宅急便」フィルムパートナーズ
魔女の宅急便公式HP