Room23

ルームメイト

2013.11.01

ルームシェアに潜むスリルを投影

年季をポイントに効かせた、春海と麗子の部屋

美術監督清水 剛

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『オトシモノ』『Another アナザー』の古澤健がメガホンをとる、サスペンスとスリルに溢れた『ルームメイト』。ひょんなことから、ルームシェアをすることになった春海(北川景子)と麗子(深田恭子)。順調そうに見えたふたり暮らしは、麗子の奇妙な言動によってやがて恐ろしい出来事を引き起こすことになる――。この物語のキーとなるふたりの部屋を手がけた美術監督の清水剛さんは、猜疑心と恐怖に溢れた空間にどんなアレンジを加えたのだろうか?

サスペンスをより面白くするアイデアに溢れた空間

主人公の春海と麗子が暮らすマンションの立地は横浜近辺を想定。「古澤(健)監督は、建物自体よりも、場所や風景にこだわっていました。都心よりは、武蔵野や世田谷辺りのような緑と共存している街がよかったんです」。そのため撮影は、外観がロケ、内観はすべて東映撮影所に建てられたセットで行われた。部屋全体のコンセプトは、「ノスタルジックで昭和テイストの古めかしい雰囲気」。「人が住む部屋としては、全体の色のトーンが必要以上に落ちている」ことで、どこか異質な空気も漂う。「部屋を古く見せると言うより、壁に日焼け跡をつけたりして、以前住んでいた人が居た感じを出しました」。

ふたりが共同生活を始めたばかりということを物語る、ものが少なく広いリビング。実は、それは主演のふたりが掛け合いの芝居をより自由に考えられるようにと、清水さんが考えた結果の空間演出。


リビングから続く長い廊下があることでセットに奥行きが出る。廊下へのガラスの扉はあえて常に開けっ放しにし、すだれで区切りをつけたことがよりおもしろい映像効果を生んでいる。


さらに、ダイニングのレトロなテレビや部屋に飾った古いポラロイドカメラなど、小物も上手に効かせている。「僕がポラロイドを飾りたいと言ったら、監督が『せっかくなら芝居に組み込もう』と。飾りやシチュエーションをつくってみて、そこから発想していくのは映画づくりでは大切な事。こういうことがあるから、映画はおもしろい」。

女性らしく整理されたキッチン周りには、レシピや料理の写真も貼られている。『リアル〜』でも演出部に入っていたスタッフが飾ったもの。


映画『リアル〜完全なる首長竜の日〜』では、「部屋の窓外はすべてミニチュアでつくった」という清水さん。「今回は、(建物を描いた)切り出しという絵と、ミニチュアでつくった立体的な雲で構成しました。窓ガラスには、透明な液を塗って微妙にゆがんで見えるよう加工しています。映画を観ていると気付かないけど、外との距離感が微妙に変わっているように感じるんです。
試写で観ると、撮影の浜田(毅)さんが果敢に窓外を映しているシーンがあって(笑)。つくりものなので、映らないように逃げがちになるものですが、すごく度胸があるなと。でも、役者さんたちの芝居がとてもいいので、そうやって堂々と撮ってもちゃんと背景として引き立っています」。

麗子(画像上)と春海(画像下)、各々のプライベートルームはシンメトリーに近い形に。春海の部屋に小さな窓をつくったことで、自然光の入る設定が出来、照明効果にも幅が出たのだそう。


キッチン、ダイニング、リビングがひとつになった広い共有スペースは、古いマンションとはいえ暮らしやすそうな設計。春海と麗子、各々のプライベートルームでは、ベッドの位置などもシンメトリーなのが印象的。


映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#85『ルームメイト』の美術について、清水さんのインタビューを掲載。

Profile

プロフィール

美術監督

清水 剛

shimizu takeshi

60年神奈川県生まれ。『電影少女』(91)でデビュー。ゴジラシリーズをはじめ、『アンダルシア 女神の報復』(11)『BRAVE HEARTS 海猿』(12)など話題作を手がける。近作に『リアル 完全なる首長竜の日』、『真夏の方程式』、『共喰い』(すべて13)がある。『ニシノユキヒコの恋と冒険』が14年公開予定。

Movie

映画情報

ルームメイト
監督・脚本/古澤健 原案/今邑彩 出演/北川景子 深田恭子 高良健吾 配給/東映(13/日本/110min) 交通事故で入院した春海は、看護士の麗子と意気投合し、退院後ルームシェアをすることに。一見ふたりの共同生活は順調に見えたのだが、ある日春海は麗子の奇妙な言動を目にする……。11/9〜全国公開 ©2013「ルームメイト」製作委員会
ルームメイト公式HP