レコード、生物、植物、写真など、希美のワクワクを詰め込んだ
「監督は、いまの時代に囚われすぎないように作品を描きたい。本作には交換日記やCDなど、いまの高校生には馴染みが少ないかもしれないアイテムがキーとして登場するけど、直筆の日記で気持ちのやりとりをしたり、好きな音楽を自由に聴ける時代であってもお気に入りのCDを見つけて大切にしたりするのは、普遍的な行為であって、それは大切にしたい。原作では色使いで登場人物それぞれの気持ちが表現されているので、その部分は大切に構成していきたいとお話してくださいました」

好奇心の強い希美のキャラクターを感じ取ることができる勉強机とその隣の棚。「希美が子供の頃から大切にしているものや、お父さんのお土産、ウーパールーパーのぬいぐるみなどが飾られています。ウーパールーパーは、ほかのロケ場所でも出てくるのですが、昭和世代ならちょっと懐かしさを感じるんじゃないでしょうか。ノスタルジックでちょっと不思議で可愛くて、部屋のアクセントになっていると思います」
「何件も候補物件を見たうえで、やっと辿り着いたロケ場所です。高校では控え目な希美なので、心境の変化が表れるシーンの多くは彼女の部屋の中。考えたり、気分が上がったり、悩んだりする。気持ちを落ち着かせるために動き回ったりもするので『自由に動ける部屋』という理想像が監督にはありました」
「明るい木目の家具と、ノスタルジックなトーンのオレンジとグリーン系のファブリックアイテムをベースにしています。お父さんっ子、おじいちゃんっ子で、子供の頃から密かに好奇心が強い女の子の部屋という想像でつくっていきました。希美にとって心地のいい居場所になればという思いを込めて、レコード、生物、植物、写真など、希美のワクワクを詰め込みました。そして、変化していく希美の気持ちを描くために鏡を用いています。鏡越しに撮ることで、気持ちがより伝わるだろうと考えました」
「友達にも自分を主張することが苦手で、空気を読みすぎてしまう女の子が、実は密かにハードコアな音楽が好きだという設定。では、ほかに何が好きな女の子だろう?と台本を読みながら想像していきました。『控えめな女の子』と『ハードコアな音楽』をどう繋いでいこう?と考える作業はとても楽しかったです」
「放送部に所属している希美は、部活動で音楽も流します。表現豊かなマキシマム ザ ホルモンをはじめ、色々な音楽を聴いている風情が出ればと思って、音楽コーナーをつくっていきました。自己表現が苦手な彼女ですが、人に対しての思いやり、寄り添う力、共感力は高い女の子なので、音楽が寄り添っている部分も大きいと思います」

瀬戸山の部屋は、希美の部屋と対照的な和室。「高校の人気者というイメージと、周りにはあまり見せていない家族思いの部分というギャップを表したかったので、監督とイメージ共有をしながら、和室の部屋で温かみが出せるようなロケ場所を探してもらいました。小物や色使いなどによってパッと見て印象が違うようにしましたが、ふたり共通の『好き』であるマキシマム ザ ホルモンやサブカルっぽいアイテムは引き立つように構成しました」

瀬戸山の部屋にもマキシマム ザ ホルモンのグッズがある。「瀬戸山が希美から英語の科目を教わるシーンのときに希美が部屋を見回して、『あ、ホルモン! 瀬戸山くん、興味があるんだ』と気づくようなコーナーを一角にギュッとまとめてつくりました。希美の主観で描かれるシーンなのですが、観ている方にも希美と同じ目線で瀬戸山くんの人となりを発見してもらえればという思いで構成しました」
「今回、家具などの飾りや小道具を探したり、つくったりする装飾のメンバーに主人公と年齢が近い20代の世代が多かったことも、とてもよかったと思います。映画づくりはチームワーク。美術スタッフそれぞれが、前向きに楽しんで登場人物たちに色付けをしていってくれたことにとても感謝しています」

希美が家族と住む東京都八王子市近郊に建つ一軒家。「ロケ地となった家は築年数が結構経っています(築4、50年くらい)。家族の思い出が詰まっていて、大切に使っているお宅という雰囲気が出ていたように思います」。希美の部屋は角部屋で二面の窓から光が入り、採光性が高い。フローリングに敷いてあるカラフルなラグも印象的。
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遠藤真樹子
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