コミック誌「ウルトラジャンプ」の人気作を実写映画化した『恋は光』。恋をしている女性が光って見えるという特異体質を持った主人公・西条(神尾楓珠)と、3人の女性の恋模様を描いた青春映画だ。全編が岡山県で撮影された本作で、齋藤さんはどのように西条の部屋をつくりあげたのか。
不思議なつくりにリフォームされていたからこそ、撮れた画がある
映画として「この地域」という設定はないものの、撮影は全編、岡山県で行われた。
「西条の部屋は、観光地としても有名な倉敷市の美観地区を少し脇に入ったところに建つ古民家をお借りして撮りました。倉敷は蔵屋敷をはじめとする古いものや文化を大切にしていて、それをしっかり残しているけれど、それだけではなく、同じ街区に西洋美術館などの新たな文化施設も受け入れてきていて、どちらもより魅力的になっているという印象を持ちました」
「西条の部屋は、観光地としても有名な倉敷市の美観地区を少し脇に入ったところに建つ古民家をお借りして撮りました。倉敷は蔵屋敷をはじめとする古いものや文化を大切にしていて、それをしっかり残しているけれど、それだけではなく、同じ街区に西洋美術館などの新たな文化施設も受け入れてきていて、どちらもより魅力的になっているという印象を持ちました」
主人公・西条が暮らすのは古びた平屋建ての一軒家。子どもの頃、両親が離婚して西条は祖父に引き取られ、祖父が亡くなった現在もそのまま住んでいるという設定だ。
「もともとおじいちゃんが住んでいたという設定なのですが、物件自体は、ふだん外国人観光客が利用する民泊として使われているようで、リフォームされていてちょっとモダンな感じがありました。そこで、“いまでもおじいちゃんがいるかのようなお家”をイメージして、古くからあるように見えるものを飾っていきました」
「もともとおじいちゃんが住んでいたという設定なのですが、物件自体は、ふだん外国人観光客が利用する民泊として使われているようで、リフォームされていてちょっとモダンな感じがありました。そこで、“いまでもおじいちゃんがいるかのようなお家”をイメージして、古くからあるように見えるものを飾っていきました」

西条の趣味は釣り。それを反映して、あちこちに釣り道具が置かれ、壁には魚拓も貼られている。「鮎釣りのシーンがあるのでその指導のためにプロの釣り師に来ていただきましたし、部屋には専門的な釣り道具も配置しました。その方にいただいたお手製の鮎カゴも置いているんですよ」
特異体質の持ち主である西条は、しゃべり口調も文語体風という特徴あるキャラクターだ。
「西条はかなり変わった男の子で、“いまどき”ではない雰囲気を持っています。劇中、『写真がほしい』とリクエストされた西条は、往年の文豪みたいな肖像写真を撮ろうとする(笑)。自分に文豪を降ろしている、無意識に成り切っているような部分があるのかなと感じました」
「西条はかなり変わった男の子で、“いまどき”ではない雰囲気を持っています。劇中、『写真がほしい』とリクエストされた西条は、往年の文豪みたいな肖像写真を撮ろうとする(笑)。自分に文豪を降ろしている、無意識に成り切っているような部分があるのかなと感じました」
読書家だけあって、部屋は書物であふれかえっている。
「徐々に増えていって本棚に入りきらなくなり、積み上げていったという設定です。実際、現場には2,000冊くらい持ち込みました。物件自体はリフォームで相当手を入れたようで、柱こそ残してはいますが、モダンな襖や障子やモザイクタイルと土間が同空間に存在しており、不思議なつくりでした。玄関を入ってすぐにある目の前の壁も、もともとはなかったと思います。でも不思議なつくりだったからこそ、“西条が文机から台所へカップラーメンを取りに行って戻ってくる”とか、“宿木が訪問してきて座る、会話をする”といったちょっとしたお芝居にも動きや変化をもたらすことができたと思います」
「徐々に増えていって本棚に入りきらなくなり、積み上げていったという設定です。実際、現場には2,000冊くらい持ち込みました。物件自体はリフォームで相当手を入れたようで、柱こそ残してはいますが、モダンな襖や障子やモザイクタイルと土間が同空間に存在しており、不思議なつくりでした。玄関を入ってすぐにある目の前の壁も、もともとはなかったと思います。でも不思議なつくりだったからこそ、“西条が文机から台所へカップラーメンを取りに行って戻ってくる”とか、“宿木が訪問してきて座る、会話をする”といったちょっとしたお芝居にも動きや変化をもたらすことができたと思います」
美術について、小林監督からの細かいリクエストはなかったそう。
「自由にやらせていただいたので、それが楽しくもあり、やりがいでもあったんですけど、途中途中、『やりすぎているかな』という気もなくはなかったんです(笑)。でも完成した部屋を見て、監督も気に入ってくださったので安心しました」「やりすぎかもしれない」と心配したのは、それほどに西条がつかみにくいキャラクターだったということなのだろうか……。「そんなことはないです。これまで“わかんなかったな”と感じるキャラクターとは出会ったことはほとんどありません。もし、つかみどころのないキャラクターだったら、“つかみどころがない”というニュアンスで表現すればいい。『キャラクターの表し方っていっぱいあるな』と、毎回勉強になっています(笑)」
「自由にやらせていただいたので、それが楽しくもあり、やりがいでもあったんですけど、途中途中、『やりすぎているかな』という気もなくはなかったんです(笑)。でも完成した部屋を見て、監督も気に入ってくださったので安心しました」「やりすぎかもしれない」と心配したのは、それほどに西条がつかみにくいキャラクターだったということなのだろうか……。「そんなことはないです。これまで“わかんなかったな”と感じるキャラクターとは出会ったことはほとんどありません。もし、つかみどころのないキャラクターだったら、“つかみどころがない”というニュアンスで表現すればいい。『キャラクターの表し方っていっぱいあるな』と、毎回勉強になっています(笑)」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#135(6月号2022年4月18日発売)『恋は光』の美術について、プロダクションデザイナー・齋藤さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

プロダクションデザイナー
齋藤しおり
saito shiori
88年千葉県生まれ。杉本亮氏に師事。 『フード・ラック!食運』(20)で美術監督デビュー。 美術助手やセットデザイナーとして近年では『日日是好日』(18)、『AI崩壊』(20)、『一度死んでみた』(20)、『キャラクター』(21)、『唐人街探偵』(21)、『TANG』(22年8月公開予定)などに参加。
Movie
映画情報

恋は光
監督・脚本/小林 啓一 出演/神尾楓珠 西野七瀬 平祐奈 馬場ふみか 配給/ハピネットファントム・スタジオ KADOKAWA (22/日本/111min)
恋愛とは無縁のまま生きてきた西条は、東雲に一目惚れし、交換日記を始めることに。西条とは幼なじみで密かに想いを寄せる北代はそんなふたりに穏やかではいられない。西条を北代の彼氏と勘違いした宿木は略奪愛モードに火がつき、猛アプローチを開始して──。6/17~全国公開
© 秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会
恋は光公式HP