Room125  

2022.4.28

恋人たちが修羅場を繰り広げる

都心から離れた郊外に建つメゾネット

美術 宮守由衣

脚本家、演出家として注目を集める加藤拓也。初長編映画は、ひと組のカップルのリアルな時間を描いた『わたし達はおとな』だ。美術の宮守由衣さんは、加藤監督の作品には、これまでも短編映画や、ミュージックビデオで参加してきた。本作にはどのように取り組んだのだろう。

モラトリアムを感じさせる身の丈にあっていない部屋

今作の主人公・優実(木竜麻生)は、都内の美術大学に通う学生という設定。
「『東京のこの場所』という具体的な設定はありませんでしたが、美大はだいたいがちょっと外れたところにあるので、住んでいるところもそんなイメージです」

劇中、重要なシーンが優実の部屋では展開する。 「監督とロケハンに行った際に、優実と直哉(藤原季節)はどう動くのかなどを話しました。加藤さんの頭のなかでは『優美がこのセリフを言うとき、直哉はここに座っている』という具合に明確な位置や動きのイメージがあって、一番自然な導線と配置を相談しながらプランを固めていきました」 物件は、コンクリート打ちっぱなしのしゃれたメゾネット。

「学生である優美には不釣り合いな物件なんです。優美は親に家賃を払ってもらっていて、何不自由ない恵まれた環境です。この物件を空の状態で見たとき、豪華に見えすぎるかもしれないなと思ったので、家具や小物の質感、色味、小物の置き方などでバランスを取ろうと思いました」

宮守さんがこだわったソファ。この周辺で重要な芝居が展開する。「加藤さんの指示があったわけではないのですが、ロケハンをした時点でソファには色を入れようと決めていました。優美はかわいい、キャピキャピとしたキャラではない。そこで、単色がいいと考え、緑色をチョイスしました」

部屋の中に、いかにも美大生というアイテムはとくに見当たらない。 「劇中、優実はチラシ制作を請け負いますし、専攻はおそらくグラフィック系になります。なんとなくキャンバスやイーゼルがあったりするのかなとイメージされるかもしれないですが、専攻によって、家ではパソコンやiPadでの作業が多くなるので、あえて分かりやすいアイテムを見せる必要はないと思っていました。過度なことは何もしたくない」
映画のチケットやポストカード、フライヤーが貼られたボード。「優美が『ちょっといいな』と思うものをかわいらしく飾っているコーナーです。私も学校が美術系だったのですが、思い出のアイテムを装飾として飾っておきたいというマインドのときがありました(笑)」

壁にかけられた優実のバッグ。
「小物関係、身につけるカバンなどは持ち道具なので、
美術部が管理していました。衣裳部の意見をすべて聞い
た上で、イメージをすり合わせていきました」

部屋に置いてあるものは、装飾部と綿密な打ち合わせで
決定していった。「アイテムのひとつひとつについて、
意味を考えてセレクトしたわけではありません。部屋全
体のトーンからキャラクターが伝わればと考えました」

ベッドはセミダブル。カバーはグレーと白のストライプ。

今回、苦労したポイントは、意外なところだった。
「『ふつう』をつくるのが一番難しいんです。気をつけないとやりすぎちゃうし、ちょっと間違えると『ただダサイ』部屋になってしまう。役者さんの雰囲気も反映させた上で、どこまでつくり込むかの加減が難しいところはありました」
そんな宮守さんにとって、美術というお仕事の醍醐味とは?
「映画の他に広告、MV、展示のデザインなどもやりますが、それぞれアプローチの仕方は違っていると思います。ストーリーに寄り添いながら作るのか、ビジュアル的なデザイン性や感覚的なものなのかなど様々です。毎回完成したときのイメージを考えて、そこにどうやって落とし込んでいくのか、考えるのは楽しいですね。また撮影、編集などを経て、見え方が変化していくのも面白いです。とにかくひとりで作り上げていく物ではないので、監督含めたくさんの人と関わりながらひとつの作品に向かっていくのは毎回新鮮でもあります」

キッチンには、今風の食器やキッチン道具が並んでいる。

都心から離れた立地に建つ「1LDK」の間取りで、コンクリート打ちっぱなしのメゾネットタイプのマンション。実際の撮影は西新宿の物件を借りて行われた。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#135(6月号2022年4月18日発売) 『わたし達はおとな』の美術について、美術・宮守さんのインタビューを掲載。
スマホ本文

脚本家、演出家として注目を集める加藤拓也。初長編映画は、ひと組のカップルのリアルな時間を描いた『わたし達はおとな』だ。美術の宮守由衣さんは、加藤監督の作品には、これまでも短編映画や、ミュージックビデオで参加してきた。本作にはどのように取り組んだのだろう。

モラトリアムを感じさせる身の丈にあっていない部屋

今作の主人公・優実(木竜麻生)は、都内の美術大学に通う学生という設定。
「『東京のこの場所』という具体的な設定はありませんでしたが、美大はだいたいがちょっと外れたところにあるので、住んでいるところもそんなイメージです」

劇中、重要なシーンが優実の部屋では展開する。 「監督とロケハンに行った際に、優実と直哉(藤原季節)はどう動くのかなどを話しました。加藤さんの頭のなかでは『優美がこのセリフを言うとき、直哉はここに座っている』という具合に明確な位置や動きのイメージがあって、一番自然な導線と配置を相談しながらプランを固めていきました 物件は、コンクリート打ちっぱなしのしゃれたメゾネット。

「学生である優美には不釣り合いな物件なんです。優美は親に家賃を払ってもらっていて、何不自由ない恵まれた環境です。この物件を空の状態で見たとき、豪華に見えすぎるかもしれないなと思ったので、家具や小物の質感、色味、小物の置き方などでバランスを取ろうと思いました」

宮守さんがこだわったソファ。この周辺で重要な芝居が展開する。「加藤さんの指示があったわけではないのですが、ロケハンをした時点でソファには色を入れようと決めていました。優美はかわいい、キャピキャピとしたキャラではない。そこで、単色がいいと考え、緑色をチョイスしました」

部屋の中に、いかにも美大生というアイテムはとくに見当たらない。 「劇中、優実はチラシ制作を請け負いますし、専攻はおそらくグラフィック系になります。なんとなくキャンバスやイーゼルがあったりするのかなとイメージされるかもしれないですが、専攻によって、家ではパソコンやiPadでの作業が多くなるので、あえて分かりやすいアイテムを見せる必要はないと思っていました。過度なことは何もしたくない」

映画のチケットやポストカード、フライヤーが貼られたボード。「優美が『ちょっといいな』と思うものをかわいらしく飾っているコーナーです。私も学校が美術系だったのですが、思い出のアイテムを装飾として飾っておきたいというマインドのときがありました(笑)」
壁にかけられた優実のバッグ。「小物関係、身につけるカバンなどは持ち道具なので、美術部が管理していました。衣裳部の意見をすべて聞いた上で、イメージをすり合わせていきました」
部屋に置いてあるものは、装飾部と綿密な打ち合わせで決定していった。「アイテムのひとつひとつについて、意味を考えてセレクトしたわけではありません。部屋全体のトーンからキャラクターが伝わればと考えました」
ベッドはセミダブル。カバーはグレーと白のストライプ。

今回、苦労したポイントは、意外なところだった。
「『ふつう』をつくるのが一番難しいんです。気をつけないとやりすぎちゃうし、ちょっと間違えると『ただダサイ』部屋になってしまう。役者さんの雰囲気も反映させた上で、どこまでつくり込むかの加減が難しいところはありました」
そんな宮守さんにとって、美術というお仕事の醍醐味とは?
「映画の他に広告、MV、展示のデザインなどもやりますが、それぞれアプローチの仕方は違っていると思います。ストーリーに寄り添いながら作るのか、ビジュアル的なデザイン性や感覚的なものなのかなど様々です。毎回完成したときのイメージを考えて、そこにどうやって落とし込んでいくのか、考えるのは楽しいですね。また撮影、編集などを経て、見え方が変化していくのも面白いです。とにかくひとりで作り上げていく物ではないので、監督含めたくさんの人と関わりながらひとつの作品に向かっていくのは毎回新鮮でもあります」

キッチンには、今風の食器やキッチン道具が並んでいる。
都心から離れた立地に建つ「1LDK」の間取りで、コンクリート打ちっぱなしのメゾネットタイプのマンション。実際の撮影は西新宿の物件を借りて行われた。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#135(6月号2022年4月18日発売) 『わたし達はおとな』の美術について、美術・宮守さんのインタビューを掲載。

プロフィール

宮守由衣

miyamori yui
神奈川県出身。山口修氏、相馬直樹氏に師事。近作に、映画『火花』(17)、『サヨナラまでの30分』(20)、『余命10年』(22)、CM「キリン『グリーンズフリー実感篇』」(21)、MV「Snow Man『Secret Touch』」(21)など。現在、TVCMなどの広告媒体を中心に活動中。
ムービー

『わたし達はおとな』

監督・脚本/加藤拓也 出演/木竜麻生 藤原季節 菅野莉央 清水くるみ 森田想 桜田通 山崎紘菜 佐戸井けん太 配給/ラビットハウス (22/日本/109min) 大学でデザインを学ぶ優実は、知り合いの演劇サークルのチラシづくりがきっかけで出会った直哉と交際を始める。ある日、優実は自分が妊娠していることに気づき、悩みながらも直哉に事実を告白するのだが―。6/10~新宿武蔵野館ほか全国公開 ©2022「わたし達はおとな」製作委員会
『わたし達はおとな』公式HP
https://notheroinemovies.com/otona/
住まいさがしはアットホーム 人気のテーマこだわり条件で新築マンションを探す その場所は未来とつながっている こだわり“部屋”FILE HOMETRIP
MENU

NEXT

PREV