暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

登頂か? 遭難か? 名古屋B級グルメの頂き「マウンテンの甘口スパ」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回訪れたのは愛知県名古屋市。B級グルメの聖地として名高いこの街、初めに断っておきますが、食べに行ったのは、味噌煮込みうどんでもきしめんでもありません! 名古屋市の郊外に、「甘口スパゲティ」なる風変わりなメニューがあると噂を聞きつけてやってきました。なんでも、半世紀近くにわたって名古屋のディープな名物として異彩を放っているのだとか。

降り立ったのは、名古屋駅から電車で30分ほど行ったいりなか駅。

降り立ったのは、名古屋駅から電車で20分ほど行った、いりなか駅。

市街地の喧噪はどこへやら、郊外だけあってとても静かなところです。目指しているのは「マウンテン」という名の喫茶店。地元では有名らしいのですが、標識も何もないので、たどり着けるかどうか不安……。ナビを頼りに目的地を目指します。

静かな住宅街の中をぐんぐん進みます。

静かな住宅街の中をぐんぐん進みます。

あれか!? それにしても巨大な看板。

あれか!? 巨大な看板がお出迎え。

見つけました! どでかい看板に、「マウンテン」の名と、スイスのアルプスを思わせる山の絵が。手作り感いっぱいで、一際目立ちます。

お店の作りは、「マウンテン」の名に恥じない山小屋風。

お店の作りは、「マウンテン」の名に恥じない山小屋風。

ここまでたどり着く前に、高校生らしい一団がゾロゾロとお店に入っていくのが見えました。学生さんや若者に人気なのでしょうか。さっそくドアをくぐってました。

■衝撃! 「甘口スパ」との出逢い

スゴい賑わい! 注文が次から次へとせわしなく飛び交っています。

スゴい賑わい! 注文が次から次へとせわしなく飛び交っています。

お店を訪れたのは午後2時半頃。ランチ時も終わって落ち着いた頃合いかな、と思っていたのですが、異常な賑わいです! やはり、若者が多い!

加納さん「よく来たねといいたいところだけど、今めちゃくちゃ忙しいから、ちょっと待っといて!」

案内してくれたのは、店主の加納さん。待っている間、メニューを眺めていると……。

スパゲティだけでも、60を超えるメニューの数!

スパゲティだけでも、60を超えるメニューの数!

甘口???

甘口???

品数にもびっくりしましたが、この「甘口」なるコーナーは何? まさかこれが「甘口スパゲティ」なのか!?

加納さん「やあ、悪い。とりあえず食ってってな。『抹茶小倉スパ』でええかい? 『メロンスパ』も人気やけど、今は売り切れててな」

ネーミングからはまったく姿や味が想像できません。が、これが求めたものなのでしょう。なぜスパゲティと「抹茶小倉」を合わせようと思ったのか疑問は尽きませんが、いただくことにしました。待つことおよそ10分。

これはスパゲティなのか、デザートなのか? スパゲティの上にはクリーム、小倉あん、桃、さくらんぼ。

これはスパゲティなのか、デザートなのか? スパゲティの上にはクリーム、小倉あん、桃、さくらんぼ。

上半分だけ見れば……ケーキです。でも、下半分はスパゲティ。立ちのぼる芳しい香りから察するに、スパゲティに抹茶が練り込まれているのでしょう。全体的に生温かく、クリームの甘い香りが鼻腔をくすぐります。なんとも不思議な香り。

いざ実食!!  まったく味がイメージできませんが、トッピングを麺にからめてパクリ。

温かさに溶け出したクリームが麺と絡みます。

温かさに溶け出したクリームが麺と絡みます。

抹茶の味がしっかり主張するのか、麺は少し苦みがありますが、クリームと絡むことでほどよくマイルドになります。もっと甘くしたければ、小倉あんを絡めてもいいでしょう。クリームとスパゲティ、あまりのぶっ飛んだマッチングに後ずさりしかけましたが、好きな人はハマるかもしれません。桃も十分に甘いのですが、サッパリしているので、お口のリセットによし。ただ、ひと切れだけなので、願わくばもう何切れか欲しいところ。

加納さん「よう食べたね。普通、『甘口スパ』を頼む人は何人かでシェアして食べることが多いんだけど

な、なんと! 正直、胃のムカムカをなだめつつ食べたんですけど……。

■「甘口スパ」誕生の理由「人と同じことをしたらダメ!」

ようやく客足が落ち着いたので、加納さんに「甘口スパ」誕生の理由を聞いてみました。

加納さん「店を始めたのは50年くらい前になるんだけど、開店から1年経った頃には、もう出しとったかなあ。やっぱ、人と同じことをしたらダメだろ? 見た目も味もインパクトがあるもんを出そうと思って」

とはいえ、長らく人気が出なかったこれらのメニュー。注目され始めたのは、十数年前にテレビで取り上げられてからだといいます。人気が出始めて以降は、メロンスパからバナナスパ、イチゴスパまで加わり、ラインナップもより風変わりになっていきます。

25歳のときに「マウンテン」を開店した加納さん。気になる店名は、師匠の名前から「山」をもらったことからだとか。

25歳のときに「マウンテン」を開店した加納さん。気になる店名は、師匠の名前から「山」をもらったことからだとか。

加納さん「スパゲティかデザートかっていったら、デザートだな。これはこれで美味しく作るのが難しいんで。甘すぎたらダメ。さっき食べてもらった『抹茶小倉スパ』なんか、結構いいあん使ってるんだよ。サラッと控えめな甘さだったろ?」

言われてみれば確かに。では、どんな時にアイデアが浮かぶんですか?

加納さん「いやもう、突然パッとだな。この商売はオリジナリティで勝負せんといかんから、いっつも考えてるよ」

スパゲティだけで60を超えるという、膨大なメニューの数が「マウンテン」のオリジナリティを物語っています。ピラフや丼もの、デザートなどを含めれば、ゆうに200種類以上。

加納さん「周りに学生さんが多いからね。いろいろ選んで楽しんで欲しいし、たくさん食べて欲しいし。スパゲティは普通盛りでも1.5人前くらいあるよ。『マウンテン』ていうくらいだからね。今度来たら他のも食べてみてよ」

どおりで! もうお腹いっぱいです……。ただ、加納さんがいうように、「マウンテン」は「甘口スパ」だけではないので悪しからず。正統派のメニューもいっぱいあります。

帰り際、加納さんにスタンプカードを手渡されました

これでやっと1合目……。「マウンテン」に登頂できるのか?

これでやっと1合目……。「マウンテン」に登頂できるのか?

「あなたは登頂or遭難どっちかな?」。一度食べたくらいでは制覇できない巨峰「マウンテン」、頂きはまだまだ先です。いつになるか分かりませんが、次は二合目にチャレンジしたいですね。

登り切れるどうかは、あなた次第。強者たちよ、「マウンテン」に集え!

  • 店舗情報
    店舗情報
    ●マウンテン
    住所:愛知県名古屋市昭和区滝川町47-86
    電話:052-832-0897
    営業時間:8:00〜22:00(LO21:40。毎月休[月曜が祝祭日の場合は翌平日休])

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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