日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡りレポートする「ご当地ヌードル探訪」。今回は、埼玉県さいたま市の浦和へ。地元で絶大な人気を誇るという「スタミナラーメン」に迫ります!
サッカー浦和レッズでかつて有名だった浦和市ですが、2001年に大宮市、与野市と合併して、さいたま市に生まれ変わりました。スタミナラーメンは、東京のベッドタウンとして昔から人が集まるこの地域で愛され続ける一杯。しょうが、にんにく、ひき肉、にら、豆板醤で作ったピリ辛の餡を醤油スープに注いだ“あんかけラーメン”で、地元では誰もが知る有名なヌードルらしいのです。一体どんなものなのでしょう?
■2度おいしいスタミナラーメン
スタミナラーメンを提供する店舗は、市内を中心に数十軒ありますが、今回やってきたのは埼京線中浦和駅。駅から住宅街へ歩いていくと、ほどなくして「娘娘(にゃんにゃん)」が見えてきました。
メニューを見るまでもなく、ありました! のれんには、「スタミナラーメン」の文字が染め抜かれていました。店に入って注文すると、店主の田中雅人さんが中華鍋を使った豪快な調理を見せてくれます。そして数分後、湯気をもうもうと立てたスタミナラーメンの完成です。
田中さん「スタミナラーメンは2度味わえるんですよ。最初はダシが効いたスープだけで食べて、そのあと上にのっている餡とからめて食べてみて!」
目に飛び込んできたのは食欲をそそる、あめ色の餡。一方でスープは意外なほど透き通っています。まずは餡をよけてスープだけを口に運んでみると、薄口醤油のまろやかさに加えて魚介の風味。シンプルな味わいながら、丁寧にダシを取っているのがわかります。
次に餡をよく絡めて食べてみると、甘辛く、後を引くおいしさ!!
そして、夢中になって食べすすめるうちに、ある事に気づきました。このラーメン、とても「熱い!」のです。スープが熱々なのはもちろんですが、体の芯から熱さがこみ上げてくるのです。よくみると、餡にはしょうがとにんにくが、たくさん入っているではありませんか。
スタミナラーメンを語る上で、もうひとつ忘れてはならないのが「スタミナカレー」。スタミナラーメンと同じ餡がかけられたご飯です。
地元のお客さんで賑わうお昼どきは、スタミナラーメンと「半スタカレー」のセットも人気。餡の濃厚な味わいと辛みが存分に楽しめます。
田中さん「辛いのが苦手な人が、スタミナで辛さに目覚めることもあってね。ウチで働いている子も最初は駄目だったけど、すっかり食べられるようになったよ」
食べ終わったころには、額に汗がにじんでいました。体が火照るようなこの感覚、普通のピリ辛・激辛料理とはひと味違います。そんな元気が沸いてくるような熱さに、“スタミナ”という名前はぴったりかもしれませんね!
■“浦和っ子”のソウルフード
スタミナラーメンの誕生はいまから30年ほど前。矢島商事という会社が経営する浦和や大宮の飲食店で提供されたと言われています。現在、会社は解散しましたが、田中さんは社員のひとりでした。創成期のスタミナラーメンに携わり、今でも当時と同じ製法で提供し続けています。その味を求めて、店にはお客さんの姿が絶えません。
田中さん「お客さんは常連が中心。サラリーマンが多いんだけど、学生時代から来てくれている人たちなんですよ」
かつて学生時代にスタミナラーメンを食べた人たちは、数十年の時間を経てなお、この店に足を運んでくれるといいます。
田中さん「浦和の子どもたちは、学校から帰ると、親に300円持たされて『娘娘にいっておいで』と言われたもんです。スタミナラーメンが、おやつの代わりですよ。やっぱりそういう人は地元に戻ってくるんですよね」
常連さんのなかには、現在はアメリカ暮らしで、帰国するたびに「娘娘」を訪れる人もいるとか! やはり、この浦和の味・スタミナラーメンが恋しくなるのですね。
そんな人たちが住む浦和市も合併により消え、今や駅名やさいたま市の一地区としてその名を残すのみ。それでも、スタミナラーメンは“浦和っ子”たちに、浦和の味としていつまでも愛され続けていくのでしょう。もし、みなさんが浦和を訪れる機会があれば、その熱さをぜひ体感してみてください。
- 店舗情報
●娘娘(にゃんにゃん)中浦和
住所:埼玉県さいたま市桜区西堀2-21-3
電話:048-839-0044
営業時間:昼11:30〜15:00 夜17:30〜21:00(スープがなくなり次第閉店、火曜休)
http://stib.jp/stamina/nakaurawa.shtml
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。