テーマ:二次創作 / シンデレラ

物件と王子様、どちらもお願いします

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読者賞について

あなたが選ぶ「読者賞」

読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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「随分前に、ね。私が足に怪我をしていた所を助けて貰ったの。だから、いつか明彦さんに恩返しをしようと思っていたのよ」
「鶴子さん、それって・・・」
(鶴子なんて昔めいた名前だと違和感を感じていたけど、まさか・・・)
彼女は満面の笑みを浮かべ、お茶碗についた最後の一粒を口に運ぶと早々に食器を片付けだした。
「そんな事よりまた来週末、麗蘭ちゃんの王子様をみんなで見に行かない?物件も紹介して頂きたいし」
「おお、いいな」
「賛成!」
「私も見たいわ〜麗蘭ちゃん一押しの方」
(ちょっと父さん!みんな!なんでそんな大事な話、簡単にスルーしているのよ!?)
みんなは勝手におうちゃんの話で盛り上がっているが、そんな事より私は鶴子さんの話が気になって仕方ない。シンクに向かう彼女の後を慌てて追う。
「つ、鶴子さん、足に怪我をしたってどうして?何があったの」
すると彼女はスポンジを持つ手を止め、すっと視線を落とす。
(な、なにこれ!?なにこの表情?!)
「麗蘭ちゃん、明彦さんには内緒にしてね」
ギリギリ聞こえる程度の声で鶴子さんが呟く。
「私、本当は、人じゃないの」
「え・・・・・・」
「なんてね」
クスクスっと堪えきれず彼女は笑い出す。
「へ?!」
「うふふ、冗談よ。これ、妄想の話に決まっているでしょ」
笑いながら彼女はウィンクをしてみせる。
(やられた・・・私のネタ、取られたよ)
もし、これから先、私が本当に一人暮らしを始めこの家を出たとしても、きっと私は彼女達と『家族』で居られるだろう。そんな妄想が私の頭の中で膨らんでいた。

物件と王子様、どちらもお願いします

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