テーマ:二次創作 / シンデレラ

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読者賞について

あなたが選ぶ「読者賞」

読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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そして、気付けば継母達と暮らし始め3年という月日が経っていた。

(もう大学生なんだし、そろそろ一人暮らしをしなきゃな)
大学が家から近い事や、こう見えて実は小心者な私は、大学に上がってもまだ実家生活を続けていた。
「麗蘭ちゃん、何か欲しいものがあるの?」
「うわっっ」
考え事に耽っていると、継母の顔がドアップで迫ってきていた。
「ほ、欲しいものって。そうね、マンションとか」
「マ、マンション・・・」
ここで彼女は一旦言葉を詰まらせたが、何か勝手に納得して一つ頷く。
「師長さんにもう少し夜勤を増やせないか頼んでみる・・・」
「そうじゃない!!!」
わたしゃ漫才芸人かい、とツッコミを入れたくなる程の綺麗な手の甲スイングが思わず出る。
「鶴子さんに買えって言っているんじゃない!私は一人暮らし用の賃貸マンションを見つけたいって言っているのよ」
「え・・・・・・一人暮らしってそんな・・・」
わざとらしく彼女はヨロヨロと体を揺らす。そんな母親を支える様に集まった姉妹二人も潤んだ瞳で私を見つめてきた。
「麗蘭ちゃん、一人暮らししたいの!?」
「そ、そんな・・・麗蘭ちゃん・・・」
(どうして、どうしてこの人達はこうなのよ!!継母って嫌な奴じゃないの?義理の姉は意地悪な奴って相場が決まっているんじゃないの?これじゃ、まるで私が継母兼義理の姉じゃない)
「そんな目で見ないでよ、みんな!もうこれは決めた事なの!私は20歳になる前に一人暮らしをするって、幼稚園の時から決めているんだから!!」
嘘です。幼稚園児が20歳までの人生計画を考えていたら若干気持ち悪い。どんな天才児だ。しかも、園児の私は、神童どころかお腹が減ったら折り紙だろうが、友達の髪だろうが、辺り構わず噛み付く様な子供だったのだ。今でもクレヨンのあの歯ごたえは忘れられず、文房具売り場に行くと思わず貪りそうになり手が震える。
「幼稚園って。そんな壮大な人生計画が子供の時からあったなんて・・・」
的確なツッコミです、鶴子さん。壮大すぎて私もビックリだ。
「とにかく、私の人生計画表によると明日は賃貸マンションを探しに行く日なの!」
「人生計画表?麗蘭ちゃん、そんなものまで書いていたの?」
「書いてないわよ!これ妄想の話に決まっているでしょ!!」

・・・・・・・・・あれ?

 とにかく、啖呵を切ってしまった以上引くに引けず、気持ち悪いくらい穏やかな陽気のこの日曜日、賃貸マンションの仲介業者店舗前まで私は来ていた。

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