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#059 鍋島緞通 織り師 入江 真梨子

鍋島緞通 織り師

Nabeshimadantsu-Orishi

入江 真梨子

Irie Mariko

プロフィール

1990年 福岡県生まれ

幼い頃、デザイナーの父に連れられ美術館へ足を運んだ。初めて興味を抱いたのは日本画。その当時は絵の先生になることが夢だった。
その後、美術短大に進学し油絵を専攻。そこでは主に抽象画を描いていた。
就職先を探し始めた矢先「鍋島緞通」と出会い、織り師になることを即決。
織り師となり3年、現在は一人で作品製作を任されるまでに成長した。

織り師を目指そうと決めた理由は?

初めて「鍋島緞通」を見たのは、就職活動中に読んだ本でした。緞通が和室に敷き詰められている写真が載っていたのです。
“すごい、これだ”と見た瞬間に感じて、すぐに鍋島緞通吉島家に見学を申し込みました。
工房で初めて緞通作りを見せていただいた時は、「私にできるだろうか…」と不安になりました。なぜなら緞通の図柄はとても複雑ですし、一畳サイズの値段が100万円以上もする高価な物。その上、一つひとつの工程はやり直しがききません。でも織り師さんたちの手元には迷いがなく、一瞬の気の緩みも見せず織り続ける姿に魅せられ、不安は憧れの気持ちに変わりました。その日に「この道に入ろう」と決心したのです。
親元(福岡)を離れての就職になりましたが、両親は「自分に合う仕事をよく見つけてきたね」と言ってくれました。植物を育てるのが大好きで、少しずつ成長する姿を見るのが楽しくてたまらない私に、この織り師の仕事はきっと向いていると思ったのでしょうね。

この仕事の難しいところは?

単純作業の繰り返しだからこそ、疲れていたり、不安や迷いがあったりすると確実に作品に「失敗」として現れます。体調も気持ちも毎日一定に保ち、同じテンションで作業しなくてはならないのがとても難しいです。
全ての面で「ムラ」の幅を最小限に抑えることが良い職人の条件だと思います。
吉島家には8人の織り師がいますが、全員女性です。
わずか数ミリという幅に糸を通していくには、女性の細い指の方が向いていることと、完成までに約1ヵ月を要する単純作業は女性でないと耐え切れないからと言われています。でも、少しずつでき上がっていく姿を見るのが大好きな私にとって、この仕事は楽しくて仕方ありません。

師匠 古川明美 さん インタビュー

入江さんはどんな職人さんですか?

織り師のみんなには、「自分の体も道具の一つ」と教えています。自分の体をよく知って、コントロールしなくては良い作品は生み出せません。入江さんは趣味の家庭菜園で、季節に合わせて野菜を作り、収穫したものをお弁当に持ってきています。心と健康の管理がしっかりできていて素晴らしいことだと考え直させられました。
彼女は性格も素直です。そして、一度注意されたことは、二度間違えません。
これからも今まで同様、お客様の立場になって物を作る姿勢を忘れず、江戸時代から続く技術の担い手の一人に成長して欲しいと思います。

取材を終えて・・・

入江さんが作業中にかけているエプロンは、彼女の手作り。
「これ欲しいなぁ」と思ったものは、ほとんど自分で作ってしまうという。
最近は、「部屋に本棚が欲しいなぁ」と思い立ち、すぐに作り上げたとのこと。
彼女の話からは、物作りが大好きで、本当に手先が器用なことが伺える。
そんな入江さんの手作り品は同僚の皆さんにも大人気。師匠の古川さんもその出来栄えの良さに、「私にもエプロン作って!」とお願いしたという。彼女は笑顔で「もちろん、いいですよ!」と言ってくれたものの、現在もまだ師匠の順番待ちは続いている。