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#051 高千穂神楽面彫師 工藤 省悟

高千穂神楽面彫師

Takachihokaguramenhorishi

工藤 省悟

Kudo Syogo

プロフィール

1987年 宮崎県生まれ

宮崎県高千穂町に代々続く神楽面彫師の家に生まれる。三人兄弟の長男のため、いずれは自分が家の仕事を継ぎ神楽面彫師にならなければいけないと感じながら育った。面彫師になることは決めていたものの、さまざまな経験をするために高校卒業後は、一般企業に就職。そして、25歳の時、父に弟子入りを願い出る。以後、偉大な面彫師の父を目標に鍛錬の日々を送っている。

「高千穂神楽面彫師」になろうとした、きっかけは?

高千穂にとって神楽は特別なもので、そこで用いられる神楽面はとても神聖なものです。小さい頃から、それを作る神楽面彫師も特別な仕事だと感じていました。
父から彫師を継ぐよう言われたことは一度もありませんが、父が神楽面彫師であることを常に誇りに思っていましたし、物づくりの仕事にも興味がありましたので、自然と自分も父のように、いずれは神楽面彫師になるのだろうと思ってはいました。
高校を卒業した後は一般の企業に就職し、大分、宮崎、東京で仕事をしてきました。これは、自分で25歳までは神楽面から離れ、外の世界でさまざまな経験を積みたいと決めていたからです。面を彫っているだけでは分からない感覚や発想を身に付けることで、いずれは神楽面を作り上げる時に生かせると思ったのです。
そして、25歳を機に、家に戻り正式に父に入門を願い出ました。

どんな「高千穂神楽面彫師」になりたいですか?

日々、面彫りの難しさを実感しています。やればやるほどですね。
彫刻刀の微妙な扱いが面の表情を大きく変えてしまいますし、同じ種類の木でも個々の木材の性質は違うので、それを的確に見極めなければいけません。今は数多くのことを経験することと、ひとつひとつの作業を真剣に取り組むことが大事だと思っています。
父の仕事は仕上げが丁寧でとても細やかです。何と言っても彫刻刀の入れ方がきれいで、それが豊かな面の表情に表れています。私はまだまだ全体のバランスばかり見ているように思います。
面の表情も基本を外さなければ、その職人の個性で表すことができます。父には父の思いの面があります。
いずれは私も自分の思いが表された面を彫ることを目標に、日々取り組んでいます。

師匠(父) 工藤浩章氏 さん インタビュー

省悟さんは、どんな職人ですか?

省悟には、面彫りの仕事を継ぐよう一度も言ったことはありません。私も父から強要されませんでしたし、やらされて出来る仕事ではありません。
高校卒業後、会社勤めをしたのはとても良いことだと思っています。外の世界に触れ、本当に自分がしたいことを見つければよいのです。実は私も先代の父も一度は会社勤めをしているんですよ。外から高千穂、そして神楽面を見ることで、その素晴らしさや魅力を実感できましたし、それが今の面作りに生かされていると思います。
ですから、省悟が戻ってきて面彫師になりたいと、申し出た時は嬉しかったです。
特に「彫刻刀」については、私以上に探究心を持って取り組んでいますので、いつか私には表せない面を作り上げてくれればと願っています。

取材を終えて・・・

初めて訪れた工藤さんの工房で意外な物に目が留まった。それは、棚にびっしり飾られたラジコンの車、飛行機、ヘリコプターの数々。
「ラジコンがお好きなんですね?」と尋ねると、「いいえ、父の趣味なんですよ…」と、省悟さんは少し照れくさそうに教えてくれた。師はラジコン、エレキギターが大好きで、一方、弟子は各地に木彫刻を見に行ったり、さまざまな彫刻刀を試してみたりと、興味が湧くのは面彫りに関わるものが多いとのこと。
「真似して作っても意味がない。」と師は言う。
ラジコンやギターが大好きな父と、飽くなき探究心で面彫りに臨む息子。感性の異なる師弟が、これから更に個性豊かな作品を生み出すことだろう。