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#029 江戸小紋職人 小宮 康義

江戸小紋職人

Edokomon-shokunin

小宮 康義

Komiya Yasuyoshi

プロフィール

1982年東京都生まれ

曾祖父(初代)と祖父(2代目)が人間国宝という、「江戸小紋」の著名な染色職人の家に生まれ、大学卒業を機に3代目の父・康正さんに弟子入りする。 以後、伝統を受け継ぎ、未来へ繋げるため、偉大な江戸小紋職人の祖父と父の下で、卓越した技を身に付けるため、努力の日々を送っている。

江戸小紋職人になろうと決めた、きっかけは?

小宮さん:子どもの頃、薄暗い作業場で1日中、ただひたすら “型付け” の作業に没頭する祖父や父の姿を遠目に見ていました。ただ、「すごく大変そうな仕事だな」とは思いながらも、朝から晩まで暗い中での仕事というイメージが強く、いい印象は持っていませんでした。
当然、職人になりたいとも考えていませんでしたし、そもそも「江戸小紋」自体にまったく興味がなかったんです。
また父は、そんな自分の気持ちを知ってか、家業を継ぐよう強制することはなかったので、そういう意味でのプレッシャーもありませんでした。ところが、大学進学を目指していた頃に父から、「進学の条件として、3ヵ月間、小紋の仕事を手伝うように」と言われ、軽い気持ちで作業場に入ったんです。
はじめは父に言われるまま作業をしていましたが、日に日に、作業場にいる時間が長くなっていったんです。もともと、物づくりが好きな性格なので、父の手伝い程度の仕事でさえ、面白くなっていきました。
今まで知らなかった小紋の奥深い、素晴らしい世界が少しずつ見えてきて、もっと知りたいという気持ちがどんどん湧いて、作業場で過ごす時間がとても楽しくてしかたなかったんです。
そして、昨日より今日、今日より明日、よりいいものを作りたいとの思いから、自分なりに工夫するようになっていき、その結果、小紋制作の面白さを肌で感じることができるようになりました。今思えば、これが、小紋職人を目指すきっかけだったのかも知れません。

どんな江戸小紋職人になりたい?

小宮さん:やはり目標は、遠い存在ですが祖父や父のように、お客さまに本当に喜んでいただける職人になりたいと思っています。そして代々受け継いだ伝統は守りつつも、自分ならではの小紋が作れるようになりたいです。まだまだ学ばなければならないことは沢山ありますし、先の話になるとは思いますが…。
ただ、3歳年下の弟も入門し、江戸小紋職人を目指し頑張っていますので、そんな弟の存在を心強いと感じる一方で、どんどん上手くなっていく姿を見て「僕も負けられない」と気を引き締めています。お互い性格が違うので、個性を出しつつ、いい意味で補い合って、より良い小紋を生み出すことができればと思っています。

父・康正さん インタビュー

康義さんに、どんな職人になってもらいたいですか?

康正さん:うちの伝統、こだわりを理解し確実に身に付けて欲しいです。初代である祖父、そして父のこだわりを私も自然と受け継いできました。
色の感覚は、その時代によって変化します。大切なのは、その変化を読み取って、いかに表現するかです。さらに、それを次の世代へと繋げていかなければなりません。
でも決して、プレッシャーに感じる必要はなく、力まず自然体で、謙虚に努力すれば良いと思っています。
作品の評価は自分がするものではありません。「評価はお客さまがするものである」ということを決して忘れずに頑張ってもらいたいですね。

祖父・康孝さん インタビュー

孫・康義さんに、むけて

康孝さん:今までで、最も嬉しかったことが二つ、あります。
一つは孫が職人の仕事を継いでくれたこと。
もう一つは息子が素晴らしい色を出してくれたこと。
色の原点は青空、息子が素晴らしい青空の色を表現してくれました。青空の色はとても奥が深いものです。青空で始まり青空で終わる。息子が作り出したその色を見て、安心して代を譲ることが出来ると感じました。
孫には父の技を確実に習得して、次の代へ繋げてもらいたい。
それと大事なのは常に私たちを支えてくれている、型紙などの職人さんの存在を忘れることなく、仕事に打ち込むことです。いくら良い型紙を作ってもらっても、我々が少しでも気を緩め、妥協した仕事をすれば、型紙の職人さんの努力も無駄になります。
多くの人の協力があって、初めて私たちが江戸小紋職人として成り立つのです。
それを肝に銘じて精進して欲しいと思います。

取材を終えて・・・

祖父や父と小紋の話ができることをとても嬉しいと、少し、はにかんで話していた康義さん。言葉数は少ないものの、素直な気持ちで江戸小紋の魅力、奥深さを語ってくれました。
伝統工芸を継ぎ、後世へ伝えていくことさえ難しい時代。そんな中で家を受け継ぎ江戸小紋職人になることを決意した若者。
取材が終わり、「お疲れさまでした」とスタッフに声をかける康義さん。その穏やかな表情の中に、江戸小紋に対する秘めた熱い想い、後世へ繋ぐことへの決意を感じとりながら、私たちは仕事場を後にしました。