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#024 鬼師 菊地 晴香

鬼師

Onishi

菊地 晴香

Kikuchi Haruka

プロフィール

1988年愛媛県生まれ

「菊間瓦」を代々製造する家に生まれ、幼い頃から、四国で指折りの鬼師である祖父・菊地壮三郎氏が作り上げる鬼瓦を見て育つ。いつか自分の手で祖父が作るような鬼瓦を作りたいと強く思うようになり、高校卒業後、壮三郎氏に弟子入りし修業を開始。壮三郎氏引退後は、父の陽一郎氏に師事し、研鑽の日々を送っている。

鬼師の仕事

日本家屋に欠かせない瓦屋根。その棟の端に鎮座している鬼瓦の製作を専門とする職人を、「鬼師」と呼ぶ。
一般的な瓦が土を練り、プレス機で成型されるのに対し、鬼瓦の多くは、現在も鬼師によって一つ一つ手作業で作られている。

鬼瓦の製造は、原寸大の図面を描くことから始まる。
瓦は乾燥と焼成の段階で12パーセントほど縮むため、図面は、縮む分を考慮して描かなくてはならない。

次に、鬼瓦の材料となる土作り。
瓦専用の土と水を混ぜてこね、柔らかさをみながら土を加える。こねた粘土は一旦寝かせ、再びこねる。こうした作業を繰り返すことにより、粘土に粘りが出て、鬼瓦を成形するのに最適な土が作られる。

材料の粘土ができると、正方形に切った粘土4枚を接合し、金べらで図面の輪郭通りに切り、鬼瓦の台を作る。そして、台に骨となる部品を接合し、鬼の顔を形作る「盛りつけ」を行う。台に対して直角に、つっぱりとなる部品を張り合わせ、その側面から土を盛り、鬼の顔の肉付けをしていく。粘土の硬さが変わると粘土同士が接合しにくくなるため、その日のうちに仕上げなければならない。

「盛りつけ」を終え一晩乾燥させると、粘土の表面を金べらで滑らかに整える「磨き」を行う。これは、鬼師の仕事の中で最も重要かつ長い時間がかかる作業。粘土が乾いていないと金べらに付いたり、磨いた表面がでこぼこになってしまうという。長く気の遠くなる作業を繰り返し、鬼の姿に近づけていく。
「磨き」の技術は、教えてもらって覚えるのではなく、実際に自分の手を動かし、その動きを手に覚えこませるしかなく、日々の積み重ねによって培われていく。

表面が滑らかになったら、鬼の髪と眉を掘り、牙と角を接合する。
そして、最後に鬼の目を慎重に入れ、完成となる。

約2週間乾燥させた後、窯に入れ、燻し、2日後、窯から出す。煤を払いのけると、銀色の炭素膜をまとった燻し銀の鬼瓦が現れる。窯で燻している間にひびが入ったり割れることもある。窯から出して煤を払い、その完成を見るまでは、鬼師の緊張も続くという。

魔物を寄せ付けない恐さと、鬼師の優しさが秘められた鬼瓦。
「菊間瓦」鬼師の伝統の技法は、今も、祖父から父へ、そして孫へと受け継がれている。

鬼瓦とは…

鬼面やワシ、家紋などをかたどった飾瓦で、屋根材に水が浸透するのを防ぐため、屋根瓦の両端に据えられる。元来、鬼瓦は装飾と厄除けの意味もあり、鬼の形をしていた。
それが使われる建物や時代とともに変わってきたと言われている。
形が鬼面でなくとも鬼瓦と呼ばれ、飛鳥時代や白鳳時代には鬼面ではなく、蓮の花をかたどった蓮華文と呼ばれる鬼瓦を飾っていたと伝えられる。
製法には、「鬼師」と呼ばれる職人の技が必要不可欠で、鬼面などの彫刻は、時間を経ても色あせない価値を放っている。