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#022 甲州印傳職人 山本 裕輔

甲州印傳職人

Koshuinden-Shokunin

山本 裕輔

Yamamoto Yusuke

プロフィール

1982年山梨県生まれ

「甲州印傳」の製法を継承する家に生まれる。中学生の時、父が伝統工芸士に認定されたことをきっかけに甲州印傳職人へ強い憧れを抱き、中学在学中には、すでに職人になることを決意していた。大学卒業後、「甲州印傳」において日本で唯一の伝統工芸士である父・山本誠氏に弟子入り。現在は弟とともに、伝統を受け継ぐ者として、技に磨きをかけ日々を送っている。

甲州印傳職人の仕事

『甲州印傳(こうしゅういんでん)』の特徴は、なめした鹿革に施された、鮮やかな輝きを放つ漆の立体的に丸みを帯びた紋様がもたらす独特の風合いにある。
受け継がれてきた伝統的技法を用い、これらの特性を活かした革工芸品を生み出すのが「甲州印傳職人」である。

『甲州印傳』の製造は、染色された鹿革を大まかに裁断する「荒裁ち」から始まる。
巾着や合切袋(がっさいぶくろ)など、品ごとに異なる刃型を合わせ、革を一枚一枚裁断していく。鹿革は一匹から取れる量が限られているため、余り皮の出ないよう丁寧に作業を行う。

荒裁ちを終えると、印傳の出来を左右する最も重要な作業「漆付け」を行う。これは、革に漆を載せる工程で、「伊勢型紙」を用いて様々な伝統の柄を付けていく。
革に型紙を置き、漆を均等に付けた“へら”を上から下へ刷り込むようにゆっくりと引く。へらは、先代・金之助氏から譲り受けたものだ。
紋様の大きさ、漆の硬さ、へらが型紙に当たる角度など、さまざまな要素を考慮し、両手に伝わってくる感覚だけを頼りに行う漆付けの作業は、柄の種類や気候、漆の状態によって、漆の練り加減などを変える。毎回条件が異なる中で、均等に紋様を付けるためには、経験によって培われた職人の勘と技が必要とされる。

漆柄を付けた革は、温度と湿度が管理された特殊な室(むろ)に入れ、短くて3日、長くて7日ほど乾燥させる。乾燥を終えると、美しい立体的な紋様の「印傳革」が出来上がる。
美しい紋様を施すには、漆の調合・付け方、乾燥時の室温や湿度といった、さまざまな要素が必要となる。この仕上がりを左右する漆の割合や湿度や温度は、代々研究、そして受け継がれてきた成果であり、門外不出とされている。
こうして出来上がった革は、縫い代を薄くする「革漉き」を行い、その後一つひとつ丹念に縫製して仕上げる。
印傳の革の表面には漆柄の凹凸があるため、縫製も難しく、高い技術が求められる。

どの工程をとっても、熟練の高度な技術と、職人の研ぎ澄まされた勘を要する『甲州印傳』。
職人の手によって脈々と受け継がれている伝統の技と心が、現代も愛され、使い続けられる品を作り出している。

甲州印傳とは…

400年以上の歴史を誇る山梨県の革工芸品。なめした鹿革に繊細な漆柄が施された加工品を「印傳」と呼ぶ。
名前の由来は定かではないが、寛永年間、来航した外国人がインド産の装飾革を幕府に献上した際に名付けられたともいわれている。

戦国時代、武田信玄が故郷の地に根付いた印傳の袋に甲冑を入れ運んだと伝えられ、それが後に信玄の名を取って“信玄袋”と呼ばれる郷土品となったことで、甲州印傳の名は広く知られるようになった。また、江戸時代後期に書かれた『東海道中膝栗毛』の中には、「腰に下げたる、印傳の巾着を出だし、見せる」といった記述が残されており、当時から、財布や巾着などの袋物として、印傳が人々の間で親しまれていたことが分かる。

熟練の職人が一つひとつ手作業で作り上げる甲州印傳は、見た目の美しさだけでなく、 長く使うほど手に馴染み、風格が増すことでも知られ、明治には山梨県の特産品としての地位を築き、1987年、国の伝統的工芸品の指定を受けた。