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#015 会津塗・加飾職人 沼田 英恵

会津塗・加飾職人

Aizunuri Kashoku-Shokunin

沼田 英恵

Numata Hanae

プロフィール

1986年茨城県生まれ

高校在学中に「将来は伝統工芸に関わる仕事がしたい」との思いを抱き、自分に合った伝統工芸を探す中で『会津塗』と出会い、高校卒業後、故郷を離れ一人会津に移り住んだ。会津塗の基礎を2年間学び、加飾技法の一つ「沈金」に魅了され「この技術を極める」と決意。会津塗の沈金技法を継ぐ数少ない職人の一人 角田弘司氏に弟子入りし、以来、師匠の技を盗むべく、研鑽を積んでいる。

会津塗・加飾職人とは…

福島県会津若松市の伝統工芸品「会津塗」。室町時代より伝わる漆器で、深い艶のある漆の上に優美な加飾が施されているのが特色。

会津塗の製作工程は、漆器の原型を形作る「木地作り」、成形された木地に漆を塗る「漆塗り」、上塗りまで完成した漆器に絵柄を付ける「加飾」に大別され、それぞれの工程を専門の職人が請け負う“分業制”が一般的で、「加飾」を担当するのが加飾職人である。

加飾の代表的な技法には「漆絵(うるしえ)」、「蒔絵(まきえ)」、「沈金(ちんきん)」などがある。「漆絵」や「蒔絵」は漆を塗り重ね絵柄を描く技法であるのに対し、「沈金」は特殊なノミで漆の表面に絵や模様を薄く彫り、その溝に金箔や、金粉、銀粉などを刷り入れ、模様を描き出す技法で、その様は、まるで漆の中に金が沈んでいるように見える。
また「沈金」の技法は、彫って絵柄を描く技法のため、やり直すことができない。失敗が許されないため、一彫り一彫りに集中し、慎重に彫り進めなければならず、ひと時も気を抜くことができない作業が続く。

「沈金」の最大の特徴であり、魅力は、線と点だけで多様な絵柄を表現することにある。
“沈金ノミ”と呼ばれる特殊な形状をした会津塗独特のノミを使い、刃の角度を微妙に変化させながら、さまざまな太さの線や、大きさの異なる点などを彫り込んでいく。しかし、このノミの扱いは非常に難しく、線や点を均一に彫るだけでも高度な技術を要する。特にさまざまな表情を作り出すことができる「点彫り」では、点の大きさや数、配置を常に確認しながら作業を進めなければ全体の調和に乱れが生じ、作品の完成度を下げてしまう。加飾職人には繊細な彫りの技術はもちろん、全体の調和を保つ感覚も必要とされる。

そして彫った模様の上に金粉や色の付いた粉などを埋め込み完成となる。
粉を埋め込むと、線と点だけで描かれた模様が、さまざまな表情を醸し出す。同じデザインであっても、彫り方が変われば作品の印象は全く異なる。そのため、作品の出来栄えは、職人の技量と豊かな感性によって決まると言っても過言ではない。

会津塗とは…

漆の上に施された優美な加飾が目を引く、福島県会津若松市を代表する伝統工芸品。
今から400年以上も前の1590年に、近江から国替えとなった蒲生氏郷が、木地師や塗師を伴って会津の地に移り、椀の製造を領内に広めたのが始まりとされる。
その後、会津塗の技術は飛躍的な進歩を遂げ、漆の栽培から加飾までを一貫して手がける一大産地となるが、幕末の戊辰戦争で壊滅的な打撃を受けてしまう。
しかし、明治時代中期には再び活気を取り戻し、会津は日本有数の漆器の産地として、今もなお、その名を広く知られている。