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#010 九谷焼絵付師 林 美佳里

九谷焼絵付師

Kutaniyaki Etsukeshi

林 美佳里

Hayashi Mikari

プロフィール

1985年石川県生まれ

幼い頃から絵を描くことが大好きで「ずっと絵を描きたい」との想いから、高校卒業後、九谷焼技術研修所に入所。九谷焼に関する知識と技術を学ぶ中で絵付の技法の一つである「赤絵細描(あかえさいびょう)」と出会い、魅了される。3年間の研修の後、「赤絵細描」の第一人者・福島武山氏に弟子入り。以来、師匠を目標に、日々、技術と感性を磨いている。

九谷焼絵付師とは…

今からおよそ350年前、加賀百万石の華麗な文化が生んだ色絵磁器『九谷焼』。
その最大の特色は、作品に描かれる「色絵装飾」の美しさにある。この色絵装飾を行うのが「九谷焼絵付師」の仕事である。

「絵付」とは、「九谷の五彩」と呼ばれる赤・黄・緑・紫・紺青の5つの色合いを使って、本焼きした陶磁器の釉薬の上にさまざまな絵や文様を描く工程のことを指す。
九谷焼の製作は、素地を作る工程と、素地に絵付をする工程に大きく分けられ、それぞれ専門の職人が作業にあたるのが一般的とされ、特に「絵付」の工程に重きが置かれている。
絵付には、赤以外の四彩を使って描く『吉田屋(よしだや)』、赤一色で細密な絵を描く『赤絵細描(あかえさいびょう)』などさまざまな技法・画風があり、それぞれに製作工程が異なってくる。

『赤絵細描』とは、江戸時代後期に生まれた画風で、赤絵の具を使って細かく人物などを描き、そのまわりを小紋などで埋め尽くし、所々に金彩を加えるもの。かつては“九谷と言えば赤絵”と言われるほどの隆盛を誇っていたが、今ではその技術を継ぐ者は数少ないという。

『赤絵細描』の最大の特徴は、赤一色の細い線で文様や人物を綿密に描くことにあり、その文様の一つひとつは、思わず息を呑むほど細かく、そして美しい。大部分を赤一色で仕上げるためには、線の均一さ、濃淡の均一さを保つことが必然であり、その技術は“至難の業”と称されるほどだ。

優れた絵付師になるためには、さまざまな文様の線・濃淡を均一に描いていく技術と、それを可能にする豊富な経験が必要不可欠となる。
集中力を絶やさず、ひたすらに描き続けることができなければ、『赤絵細描』の一人前の絵付師になることはできないのである。

九谷焼とは…

江戸初期に加賀藩・九谷村で作られた美しく華やかな絵が描かれた色絵磁器を指す。
1655年頃、加賀の支藩・大聖寺藩初代藩主の前田利治が領内の九谷村で陶石が発見されたことを機に、藩士の後藤才次郎に命じて製陶させたのが、はじまりと言われている。
この時期に作られた焼き物は「古九谷(こくたに)」と呼ばれ、短期間のうちにめざましい発展を遂げた。しかし、半世紀を過ぎた頃、忽然と姿を消す。理由は未だわかっておらず、当時の作品は値が付けられないほどの貴重な品とされている。

それからおよそ120年の後、古九谷の再興を目指し、金沢や小松、九谷村で次々に窯が開かれ、古九谷の伝統を受け継ぎながら、各々が独自の技法・画風を作り上げていった。
明治時代に入ると、豪華な色彩を施した新たな画風「彩色金襴手(さいしききんらんで)」が有名となり、大量の九谷焼が海外へ輸出され、産業としての地位が築かれた。
そして現在でも、各時代の窯の上絵付けの作風を源流に、常に新たな技法・画風が生まれ続けている。