我が街に終止符を打つタワーマンション

これまでの連載で見てきたように、マンションポエムの意外な特徴は「建築についてほとんど謳わない」という点だ。では何を語っているのかというと、街の由緒や利便性についてだ。マンションポエムは「立地の詩」なのである。

前回見たように、土地から上空に離れているタワーマンションにいたっては、その「立地ポエム」からも離陸してしまい、最終的には「日本」そして「宇宙」にまで上りつめてしまった。

すっかり浮世離れてしまった感のあるタワーマンションのポエムだが、ひとつだけやたらと具体的に語る分野がある。それは「再開発ポエム」である。

当然のことながらタワー物件の多くが、大規模再開発を伴う。街の歴史や由緒を語りがちなマンションポエムだが、これら大規模物件においては一新されることをアピールする。タワーマンションのポエムにおける「土地」とは再開発事業のことなのだな、と面白く思った。

それにしてもこの方面に関してはじょう舌だ。事業の経緯について詠うポエムも散見された。

前回「地球は丸い、そして美しい」「美しい地球(ほし)」などとスペースオペラなポエムを語ったタワーとは思えない、文字通り地に足のついた詩である。もはやポエムというよりは事業説明の文章に近い。

そして、さらに具体的に再開発によってもたらされる利便性・メリットについて謳うポエムも。

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「日本の美」「世界に誇る」などとハイテンションで謳うのと同時に、ペデストリアンデッキの快適性を謳う。このアンバランスさ、微笑ましい。タワー物件のポエムは意外にキュートだ。

そういえば、タワーマンションについて最も具体的に謳われるはずの「高さ」について、奇妙なことにポエムは口をつぐんでいる。

本稿執筆2016年2月末現在「アットホーム新築マンションプリーズに」掲載されている首都圏の「地上20階以上のタワーマンション」は39物件。その中で「高さ」について謳っているポエムはこれだけである。「国分寺最高層」「横濱市最高層」の部分に註がついていたことなどからもうかがえるが、広告として安易に「最高」を謳えないという事情もあるのだろう。いずれにせよタワー物件が「高い」なかなかと言わないというのは面白い。もしかしたら高いことはそれほどウリにならないのだろうか。

それにしても現在募集中のタワー物件が39もあるというのには驚いた。1997年の規制緩和以降急速に建設され、東京の風景を変えてきたタワーマンションだが、その勢い未だ衰えず。

前回、タワー物件は「街にとっての誇りとなる」という景観に対しての目くばせを感じさせるポエムを紹介したが、その戸数の大きさを考えると、風景だけでなく街の体制というか性質をも変えてきたのではないかと思う。

一物件で数百戸、大きいものだと千戸を超える人口をおさめるタワーマンション。歴代の東京の物件を見ると、最大で二千戸を超えるものもある。これらを合わせればちょっとした「地方自治体」の規模だ。やろうと思えばタワーマンションの代表として議員の一人も送りこめるのではないか。

さて、ぼくが今住んでいる街にも駅前再開発を伴ったタワー物件がある。そのマンションポエムはどんなだろうか、と調べてみた。びっくりした。

「この街のフィナーレを飾る」って! 終わってしまうのか、我が街は。